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ものづくりコンサルタントコラム「【調達購買のキホン】優良なサプライヤーの見極め方(QCDDM評価について)」(2024/2/2更新)

ものづくりコンサルタントコラム「【調達購買のキホン】優良なサプライヤーの見極め方(QCDDM評価について)」
筆者:藤澤俊明 カイゼンベース株式会社 代表取締役 シニアコンサルタント
東京理科大学大学院を卒業後、トヨタ自動車株式会社に入社。生産技術部門で工場建設・ライン立上げ等を経験後、製造系大手コンサルティングファームを経て独立。幅広い業種でのコンサルティング実績を積み重ねている。
2015年カイゼンベース株式会社を設立し、現場力向上のための人材教育サービス「カイゼンベース」を立上げ。カイゼンベースのコンテンツ拡充と、それを活用した人材育成・実践コンサルティングにより国内外の企業改革に尽力している。
カイゼンベース株式会社ホームページはこちら

調達購買とは

調達購買とは、企業や組織が必要な商品やサービスを調達し、購入するプロセスのことを指します。製造の現場で普段何気なく使っている「調達購買」という言葉ですが、「調達」「購買」のそれぞれの言葉の意味をご存じでしょうか?

「調達」は、事業戦略に基づいて必要となるものを購入するプロセスを指します。生産に必要な原材料や部品を必要数(量)仕入れ、安定的に供給可能な状態にすることが主な役割です。

「購買」は、生産計画に応じてその時必要なものを、選定された供給元から購入することを指します。生産に必要な原材料や部品を購入し、タイミング良く供給することが求められます。

調達購買は、製品やサービスの製造・生産に必要となる材料を仕入れる業務のことであり、製造業を行っている企業の「要」と言っても過言ではありません。調達購買の担当者は、物品の購入を検討・発注し、現場に供給するまでの一連のプロセスを管理する役割を担いますが、単に物品を現場に供給すれば良いというわけではありません。利益率向上・業務効率化のために「より良い品質の製品(部品)をより安価で継続的に購入すること」が求められます。

必要な資源を効率的に入手し安定した供給を行うことは、経営に直結する重要な要素です。本コラムでは、調達購買の担当者が知っておきたいポイント、利益率向上のために心得ておきたいサプライヤー評価について解説していきます。

調達購買とは

調達購買の流れ

一口に調達購買と言っても、様々な工程が含まれます。調達購買の業務は具体的にどのようなものでしょうか?一般的な調達購買の流れを確認していきましょう。

1.調達計画の作成

生産部門から原材料・部品の購入依頼があったら、必要な商品やサービスのリストを作成し、調達の優先順位を設定します。

2.見積依頼書の作成

調達する商品やサービスの詳細な仕様・見積依頼書を作成します。仕入れ先に提出する見積依頼書を作成するためには、社内関連部門との打ち合わせも重要な工程です。特に設計部門とは綿密に打合せを行い、調達する商品の仕様を明らかにします。

3.仕入先への見積依頼

作成した見積依頼書をもとに、複数のサプライヤー(仕入先)に見積依頼を行います。サプライヤーから届いた見積り結果は、設計部門はじめ関連部門と一緒に比較検討していきます。ここで忘れてはいけないのが、サプライヤーには大企業もあれば中小企業もあり生産体制は様々であるということです。強制的な価格交渉は、サプライヤーの経営に大きな打撃を与えることになってしまいます。購買担当者は、見積仕様書の十分なチェックと正当に評価できるスキルを身に付けておくことが必要になると覚えておきましょう。

4.提案の評価(QCDDM評価)

仕入先から見積提案を受け取り、価格、品質、納期等を評価していきます。見積結果の検討は調達購買部門だけでなく、設計部門も一緒に検討し、適切な仕入先を選定します。
見積り評価を正当に行うにあたり、調達購買部門に求められることが2つあります。1つ目は、コスト構成内容の詳細を理解し、評価できる人材を揃えること。2つ目は、類似品のコスト実績や市場相場感、自社所有のコストテーブル等のデータベースを基に比較検討を実施することです。この2つが出来て初めて、サプライヤーの見積りとの差異分析が可能になります。差異の理由が仕様なのか、製造面なのか、市況の物価上昇の影響なのか等を確認しましょう。
そして、最終的な評価の際にはQCDDMの総合判断で評価を行います。複数のサプライヤーから絞り込みを行った上で評価を実施するようにしましょう。(※QCDDMについては次の章で解説します。)

5.契約の交渉

見積評価が完了したら、最適な条件で契約を交渉し合意します。コストだけではなく、納期や諸条件についても明確にしたうえで最終的な契約を交わし正式に発注書を提出します。

6.発注と納品

契約した商品やサービスを発注し、納品を受けます。発注を行う際には、発注書のほかに取引条件を双方で定めた「基本取引契約書」を締結することが必要です。「基本取引契約書」の主な内容は以下の8項目です。

①引き渡しの定義
②代金支払い方法
③所有者や知的財産権等の権利の所在
④検収方法と不適合品の扱い
⑤紛争や不慮の災害が発生した際の対応方法
⑥契約有効期間
⑦瑕疵担保責任の所在
⑧発注条件の変更

継続的に取引を行うには必ず契約を結び、トラブルを起こさないようにしていきましょう。

7.支払い

納品された商品やサービスに対して支払いを行います。

以上、調達購買の業務の流れは理解できたでしょうか?上記のフローからわかる通り、調達購買はコスト・納期・品質等、経営の根幹となる重要な要素を含んでいます。特に、仕入れ先の開拓・選定は、コストや業務効率に大きな影響を及ぼす可能性がある非常に重要なポイントです。納期はどれくらいか?妥当な仕入れ価格はいくらか?要望に応えられる技術力があるか?生産のキャパシティは十分か?等、十分な検討を行い適切な仕入れ先を選定することが調達購買担当者の重要な役割であることを忘れてはいけません。

それでは、どのようにしたら適切な仕入れ先を開拓・選定できるのでしょうか?仕入れ先を選定する際に大切なのがサプライヤー評価です。以下の章からはコスト削減・品質向上のために調達購買の担当者が知っておくべきサプライヤー評価・サプライヤー選定の仕方を解説します。

サプライヤー評価とは

サプライヤー評価とは、企業や組織が取引する仕入れ先のパフォーマンスや能力を評価することです。新規サプライヤーの発掘だけでなく、主に以下の目的を持って行われます。

1.サプライヤーの発掘

新規のサプライヤーを発掘する際にサプライヤー評価は必要不可欠です。自社の要件や基準に合致する信頼性の高いサプライヤーを選ぶために行います。サプライヤーの能力や実績を評価し継続的な取引ができる仕入れ先を開拓します。

2.サプライヤーの継続的な評価

新規サプライヤーの開拓だけでなく、既存のサプライヤーのパフォーマンスを定期的に評価するためにもサプライヤー評価は行われます。企業や組織は、サプライヤーが契約条件や品質基準を遵守しているかどうかを確認し、継続的な改善を促すために評価を行います。継続的な評価はサプライヤーの育成のためにも大切であると覚えておきましょう。

3.リスク管理

サプライヤー評価は、リスク管理の一環としても重要です。サプライヤーの財務状況やリスク管理能力を評価し、リスクを最小限に抑えるための対策を講じることが求められます。

適切なサプライヤー評価を行うことで、組織は信頼性の高いサプライヤーとのパートナーシップを築き、品質向上やコスト削減などにつなげることができます。では、どのようにサプライヤー評価を実施したら良いのでしょうか?サプライヤーの評価に活用できる評価基準に、QCDDM評価基準と呼ばれるものがあります。どのような評価基準なのか、具体的な評価基準を確認していきましょう。

QCDDM評価基準とは

サプライヤー評価QCDDMは、調達購買プロセスにおいてサプライヤーの評価を行うための指標です。QCDDMとは、5つの重要な評価項目の頭文字を取ったものです。

「Q」=Quality(品質)
「C」=Cost(コスト)
「D」=Delivery(納期)
「D」=Development(開発)
「M」=Management(管理)です。

それぞれ項目について詳しく確認していきましょう。

1.Quality(品質)

サプライヤーが提供する商品やサービスの品質を評価します。品質は、仕様に適合しているかどうか、欠陥や不良品の割合、品質管理体制などを考慮して評価します。具体的には、品質のバラツキやミスが生じないこと、ISO等の資格の取得状況といった品質改善に対する取組状況を確認していきます。また、検査の体制や不良があった際の対応・保証等も重要です。以下の確認項目に基づき、組織体制表や検査基準書を確認し要件に合致しているかを評価しましょう。

確認項目 評価手段
製品の品質レベルの保証体制は明確になっているか? 組織体制表
ISO認証取得があるか? 取得証明書
検査装置の日常点検は行われているか? 有効期限リスト
初回ロット品の検査は確実に実施されているか? 検査基準書
不良時の対応は明確になっているか? ルール表示
QC工程表の有無と日常的にメンテナンスされているか? QC工程表

2.Cost(コスト)

サプライヤーが提供する商品やサービスの価格を評価します。コストは、競争力のある価格で提供されているかどうか、コスト削減の取り組み、価格変動の影響などを考慮して評価します。定期的なコストダウンに対するチャレンジや取組状況を過去の実績をもとに評価するのが良いでしょう。コストの評価は、コスト交渉にてコストを下げる能力があるサプライヤーか見極める為に行うものです。コストを下げることが出来れば、自社の利益獲得に繋がります。また、サプライヤー自身の企業レベルの向上にもなると覚えておきましょう。

確認項目 評価手段
原価削減活動は協力的か? 見積り評価
原価削減活動は積極的に実施されているか? 実績表
VA/VEの提案実績はあるか? 実績表

3.Delivery(納期)

サプライヤーが約束した納期を守るかどうかを評価します。納期の遵守は、生産計画や物流計画の正確性、在庫管理の効率性などを考慮して評価します。異常発生時の速やかな対応等の取組状況も評価に含まれます。
評価の際には、必ずサプライヤーを訪問し現場の状況を確認しましょう。書類やデータ上ではわからない落とし穴が潜んでいる場合もあります。無理な生産体制ではないか三現主義で確認することが大切です。

確認項目 評価手段
生産能力や機械設備力が備わっているか? サプライヤー訪問
量産リードタイムの管理体制は明確になっているか? 組織体制表
生産現場は、工程L/O、3S、作業標準の遵守ができているか? サプライヤー訪問

4.Development(開発)

もう一つのDはDevelopment、開発です。サプライヤーが持つ技術力やイノベーション能力を評価します。開発能力は、新製品の提案や改善活動への参加、技術的なサポートなどを考慮して評価します。

確認項目 評価手段
類似製品やコア技術の技術水準の高さの確認 サンプル品評価
技術開発力、設計能力のレベル確認 実績表
類似品の試作品レベルはミートしているか? 限度見本

5.Management(管理)

サプライヤーの経営管理能力を評価します。経営管理能力は、財務状況の安定性、リスク管理の取り組み、コミュニケーションや協力の能力などを考慮して評価します。経営管理能力の評価では財務状況などに目が行きがちですが、サプライヤーの協力度合や積極性も非常に重要です。信頼できるサプライヤーかどうかきちんと評価を行いましょう。

確認項目 評価手段
経営の健全性(収益・成長・安全)は問題ないか? 財務諸表
協力先の管理体制(開発、納入、経営)は問題ないか? 組織体制管理表
依頼に対する経営者の協力度は? ヒアリング

上記のような評価項目を総合的に評価することで、サプライヤーの総合的なパフォーマンスを把握し、適切なサプライヤー選定や契約条件の交渉を行うことができます。また、サプライヤーのパフォーマンスを十分に理解し把握することはリスク軽減にもつながります。以上のような評価を行い、本当にこの取引先に発注しても良いかどうかを判断していくようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?サプライヤー評価には様々な視点が必要となりますが、上記のような項目で評価をしていくことで優良なサプライヤーを選定することができます。 また、サプライヤーを定期的に評価することは業務効率化やコスト削減の実現だけでなくサプライヤーの育成にも繋がります。継続的な取引を目指す上ではサプライヤーの発掘だけでなく育成も非常に重要な視点です。ぜひ参考にしてみてください。

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Lesson1:調達購買の役割(13:52)
Lesson2:サプライヤー評価のポイント(20:11)
Lesson3:原価管理と原価計算(前編)(11:56)
Lesson4:原価管理と原価計算(後編)(15:07)
Lesson5:調達購買業務に必要なスキル(9:31)

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