EDIの法制度対応とは?EDIを分かりやすく説明「EDIガイド」


デジタル化が進む現代のビジネス環境において、EDI取引は企業間データ交換の重要な手段となっています。しかし、その利用には法的な要件も伴います。
電子帳簿保存法、インボイス制度、下請法、外国送金ISO20022は、企業の経理・税務処理や取引プロセスに大きな影響を与える重要な制度や規格です。電子帳簿保存法は税務関連書類の電子保存ルールを定め、インボイス制度は消費税の仕入税額控除を規定します。EDIの下請法対応は公正な取引環境を確保し、ISO20022対応は国際金融取引を標準化します。
これらの制度や規格に適切に対応することで、効率的な業務処理と適正な取引関係の構築が可能となります。
EDI取引は、電子帳簿保存法(電子帳簿等保存制度)において電子取引の一形態として認識されています。そのため、EDIで授受されるデータを電子取引データとして保存することが義務付けられています。電子帳簿保存法に対応したEDIの活用は、取引の効率化だけでなく、法令遵守とデータの適切な管理にも貢献します。
電子帳簿保存法は、法人税や所得税等の各税法上、保存が必要な「帳簿(国税関係帳簿)」や「領収書・請求書など(国税関係書類)」の電子保存に関するルールを定めています。この制度は、これらの文書を紙ではなく電子データ(電磁的記録)での保存を認めるもので、「電子帳簿保存」、「スキャナ保存」、「電子取引データ保存」の3つの方法に分類されます。
一方、インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除に関する制度です。この制度下では、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要となります。電子帳簿保存法の対象となっている経費のうち、消費税法上の課税仕入れに該当するものがインボイスの対象となります。
企業は両制度の要件を満たすことで、適切な税務処理と効率的な文書管理を実現することができます。
EDIが電子帳簿保存法に対応するためには、以下の要件を満たす必要があります。
1.電子データでの保存 | 2022年1月から施行された電子帳簿保存法により、EDIの取引データは電子データとして保存することが義務付けられています。紙に出力して保存することは認められません。 |
2.真実性の確保 | データの改ざん防止のため、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。 ●タイムスタンプの付与:データの改ざん防止のため、タイムスタンプを付与するか、改ざん防止機能を持つシステムを使用する、もしくは、電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除について、物理的にできない仕様である必要があります。 ●訂正・削除履歴の保持:訂正や削除が行われた場合、その履歴が確認できるシステムを使用することが求められます。 ●事務処理規程の整備:正当な理由がない訂正・削除を防止するための事務処理規程を定め、それに基づいて運用する必要があります。 |
3.可視性の確保 | データを迅速に検索・閲覧できる状態にするため、以下の要件を満たす必要があります。 ●検索機能の実装:取引年月日、取引金額、取引先の記録項目により迅速に検索できるようにする必要があります。また、日付や金額の範囲指定、複数の記録項目を組み合わせた検索も可能にする必要があります。 ●見読可能装置の備え付け:データを閲覧・出力できる装置(パソコン、ディスプレイ、プリンターなど)を備え付けることが求められます。 |
4.保存期間 | 電子データの保存期間は原則7年間ですが、場合によっては10年間の保存が必要です。 |
EDIの電子帳簿保存法対応システムを自社構築型で導入する場合、様々な課題が生じる可能性があります。例えば、法令対応・理解の難しさ、高額な初期費用、運用・保守の負担、セキュリティリスク、将来を見越した拡張性の考慮などが挙げられます。
一方、クラウドサービスを利用することで、これらの課題に効果的に対応しつつ、業務効率化やコスト削減を実現することができます。クラウドサービスでは、法令対応や最新のセキュリティ対策が常に更新され、専門知識を持つスタッフによる運用・保守が行われるため、自社での負担が大幅に軽減されます。また、初期費用を抑えつつ、必要に応じて柔軟にシステムを拡張することが可能です。
法令対応・理解の難しさ | 電子帳簿保存法などの法令に対応するための要件を満たすために、制度を理解した上で、システムの改修や追加開発が必要になることがあります。 |
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コスト面 | システムの設計、開発、導入にかかる初期費用が高額になることが多いです。ハードウェアの購入やソフトウェアのライセンス費用、開発者の人件費などが含まれます。 |
運用・保守の負担 | システムの運用や保守にかかるコストや労力が大きくなります。定期的なメンテナンスやアップデート、トラブルシューティングなどが必要です。 |
セキュリティリスク | 自社でセキュリティ対策を講じる必要があり、専門知識が求められます。セキュリティの脆弱性が発生した場合、迅速に対応するための体制が必要です。 |
将来を見越した拡張性の考慮 | 事業の成長に伴い、システムの拡張が必要になる場合がありますが、自社構築型では柔軟に対応することが難しいことがあります。 |
スマクラでは、電子帳簿保存法に対応するサービスとして「スマクラ データアーカイブ」をご提供します。
このサービスは、自社構築または他社EDIサービスを利用でも接続できる、JIIMA認証取得クラウド型EDIデータ保存サービスです。各企業間で連携されているEDIデータを、スマクラ データアーカイブに自動連携し、スマクラサービスプラットフォーム上でデータを保存します。企業の担当者様は、インターネットを介し、保存データのダウンロードなどを行うことができます。
インボイス制度への対応には、適格請求書の発行方法、受領方法、保存、処理等について検討が必要です。すでにEDIシステムで取引情報をやり取りしており、その中に支払・請求情報が含まれる場合、EDIデータのインボイス対応が必要となります。
また、電子インボイス保存が義務付けられるサプライヤーにとっても、EDIを活用したインボイス対応はメリットとなります。電子インボイスに向けて、法的要件に基づいたEDI仕様の変更と、仕入税額控除要件を満たすための電子帳簿保存の対応をセットで提供することで、EDI導入企業だけでなくサプライヤーにも以下のメリットをもたらします。
●信頼性の向上:サプライヤーは、自社のデータが適切に保存され、法的要件を満たしていることを確信できます。
●効率化:電子的な帳簿保存は、紙の書類を減らし、データの管理が効率化されます。
●コスト削減:書類の管理や保管にかかるコストが削減されます。
一方で、EDI導入企業は、以下の点を考慮する必要があります。
●法的要件の遵守:電子帳簿保存法に基づいた保存方法を確立し、遵守することが必要です。
●データの安全性:電子的に保存されたデータの安全性を確保し、不正アクセスやデータ漏洩を防止する対策を講じる必要があります。
●システムのアップデート:現在のシステムが法律に適合しているかを定期的に確認し、必要に応じてアップデートを行うことが重要です。
これらの対応は、EDI導入企業の情報システム部門にとって業務負荷が高くなる可能性があります。しかし、自社構築ではなくEDIサービスを利用することで、これらの考慮点はEDIサービス・プロバイダーの責任となり、EDI導入企業の情報システム部門の業務負荷を軽減することが可能になります。
スマクラでは、電子インボイスに向けて、法的要件に基づいたEDI仕様の変更と、仕入税額控除要件を満たすための電子帳簿保存の対応をセットでご提供いたします。これにより、企業は効率的かつ法令遵守を確実に行いながら、EDIシステムを活用することができます。
EDI取引データの保存に当たっては、電子帳簿保存法の対応だけではなく、消費税法や下請代金支払遅延等防止法(下請法)などの対応も確認しておく必要があります。
下請法は、親事業者と下請事業者との取引の公正性を確保し、下請事業者の利益を保護することを目的としています。
EDIシステムを導入・運用する際には、下請法の規定に適合するようなデータ管理体制を整えること、法令遵守と業務効率化を両立させるソリューションを選択することが重要です。また、下請法の改正や運用基準の変更に備え、常に最新の情報を入手し、必要に応じてシステムや運用方法を更新していく姿勢が求められます。
EDIを利用する場合の下請法対応については、国税庁OBの袖山税理士が解説する「製造業がEDIを利用する場合の下請法対応」をご覧ください。
外国送金のフォーマットが変更されます。EDIシステム(ファームバンキング)で外国送金業務を行っている企業は、2025年11月までの対応が必要です。
国際銀行間金融通信協会(SWIFT)は、国際的なアンチマネーロンダリングの規制強化や送金処理の迅速化などの外国送金に関する課題への対応を目的に、外国送金のフォーマットをISO20022に移行することを発表しています。ファームバンキングで外国送金業務を行っている企業は、2025年11月までにISO20022対応のフォーマットへの変更や伝送手順の変更だけでなく、関連するシステムの改修も必要となります。
外国送金を行っている企業において、現在利用しているEDIシステムがISO20022に未対応の場合、早急な対応が求められます。費用面の問題もありますが、特に自社開発システムの場合は期間面での課題が大きいと考えられます。自社構築の場合、要件定義に一定の期間が必要なことに加え、駆け込みの対応依頼が来た場合、人材不足のIT業界では対応が困難であり、11月までの対応ができない可能性があります。
短期間での対応を検討する場合、一般的な仕様のEDIを利用しているのであれば、自社構築からEDIサービスの利用へ変更することも有力な選択肢となります。ただし、サプライヤー側のシステム改修や通信テスト等の期間が必要なことを考慮すると、EDIサービス利用を選択する場合でも迅速な対応が求められます。
スマクラでは、ISO20022に対応するファームバンキング接続サービスとして「AnserDATAPORT接続サービス」をご提供します。このサービスは、企業とスマクラの間はISO20022に準拠したXMLフォーマットと従来の固定長フォーマットの双方で連携が可能です。
現在利用しているEDIシステムの外国送金のフォーマットが固定長の場合は、送金依頼のための「依頼データ」、送金意思確認のための「照合データ」、金融機関の処理結果を通知する「結果データ」を、スマクラが企業に応じたフォーマットに変換します。また、AnserDATAPORTとスマクラの間は、ISO20022フォーマットおよびJX手順での通信に対応しています。