流通4団体の合同による第3回「流通BMS普及推進説明会」を開催(福岡)

日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、(一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体合同による第3回流通4団体合同「流通BMS普及推進説明会」が2012年3月22日、福岡市のTKPガーデンシティー博多で開催され、流通BMS普及促進事業の説明や、各企業での導入事例の紹介、経済産業省による特別講演などが行われた。

講演:『流通BMS導入がもたらした、構造変革-物流センター稼動に伴う流通BMSの導入とその効果について』
株式会社 西鉄ストア 情報システム部主任 濱田 孝洋 氏

福岡県を中心に、54店舗のスーパーを運営している株式会社西鉄ストアの濱田孝洋氏は、2006年11月より進めている自社の流通BMSの導入について講演を行なった。濱田氏は、EOSの発注精度の伸び悩み、毎回90~120分かかる発注処理・伝送処理時間、毎月平均100件程度発生する商品代金のお支払いについての問い合わせという「3つの限界感」が流通BMS導入前の課題としてあったと説明。また、流通BMS導入にあたっては「社長からスムーズにOKをもらった」とトップの標準化への理解が大きかった点を強調した。

「暗中模索から始まった」という西鉄ストアの流通BMS導入は、Ver0.4を元に半年をかけてマッピングすることから始まった。区分に流通システム開発センターの標準コードを使ったことが、スムーズな導入の要因になったという。社内での導入準備が整い、2007年5月より、取引先企業への普及説明を行なった。取引先1社あたり計4回もの説明会を重ね、標準化によるビジネスフローのメリットを訴求していったが、「標準化と言いつつも標準になる前の段階だったため、『結局は西鉄ストアの独自仕様になるだけではないか』という声もあった一方で、『これで、どの相手とも安全安心に取引ができるシステムが作れますね』という励ましの声もいただいた」と濱田氏は振り返る。

VANセンターに2社のASPベンダーのサービスを利用したことで、「数社あるJCA手順の取引先様からのデータを、VANセンターで変換して対応している」という西鉄ストア。流通BMSの効果として、回線速度の高速化、接続料金の固定化によるコスト削減が実現できたという。また、導入前の課題であったEOSの発注精度も98.5%にまで向上し、伝票枚数も398,182枚から128,958枚まで約67.6%の大幅な削減ができ、商品代金への問い合わせも0件になったと効果を語った。

『イオングループにおける全国と九州での流通BMSの取り組み-2012年末完全移行』
イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤 清 氏

コーヒーブレイクを挟み、イオングループのバックオフィス業務を担当するイオンアイビス株式会社の北澤清氏が、イオングループで本格的に導入されている流通BMSの取り組みについて講演した。

イオングループでは、1981年に、JCA手順に基づいた「JETシステム」と呼ばれるEDIシステムを自社で構築し、運用していた。また、2003年度からはXML-EDIの実証の段階にも参加し、流通BMSの制定にも積極的に関わってきた。実証実験の段階から、流通BMSによってフォーマットが標準化できれば「伝票レスやペーパーレス、物流センター業務の軽減など、業務プロセスの改革に繋がる」と確信できたという。しかし、「せっかく良い仕組みがあるのに、なかなか取り組みが進まない」という状況にあった。

イオングループで流通BMSの取り組みが本格化したきっかけは、昨年5月に開かれた製・配・販連携フォーラムにおける「流通BMS導入宣言」だったと北澤氏は振り返る。「流通BMS導入宣言」を発表した49社のうち、イオングループ企業は10社に上り、2012年12月末日までに流通BMSへの移行を完了するという方針を定めた。完了日を決めて移行する理由は、早期のサプライチェーン全体最適化の推進という目的以外にも、従来のJCA手順のEDIシステムの老朽化という事情あったという。

移行に向けて、2011年下期より取引先説明会を実施。1700社にも及ぶ取引先企業に対して、流通BMSの導入計画を説明した。流通BMSのバージョンはVer1.3で導入。取引企業に対しては、どのバージョンでも利用できるようにし、導入タイプについてもサーバー型、クライアント型、Web型のいずれの方式にも対応するよう準備している。流通BMSの9つのメッセージを使用し、まずは導入の「ステップ1」として発注と受領を移行する予定だ。さらに請求と支払、値札、発注予定についても検証を行ない、今年12月末までに「出荷」をのぞくプロセスを流通BMSに移行する。

「従来は自社ですべてのシステムを構築していたが、今はそういう時代ではない。ASPベンダーや統合型パッケージを利用すれば、より短時間で流通BMSが導入できる」と語る北澤氏。移行にあたり、イオングループでは3社のASPベンダーと役割分担したことで、高コストだったJAC手順の料金体系を見直し、事務代行手数料の改定を行なうことができたという。

自社の取り組みを説明し、最後に「流通BMSの早期移行は、より大きな効果を実現する」と強調し、北澤氏は講演を終えた。

『消費財サプライチェーンに関する大規模災害時の課題と今後の取り組み』
経済産業省 商務流通グループ 流通政策課 係長 草野 百合子 氏

特別講演では、経済産業省 商務流通グループ 流通政策課の草野百合子氏が、「ライフライン物資供給網強靱化実証事業」について説明を行なった。草野氏はサプライチェーンに関する大規模災害時の課題を説明しながら、「震災などの緊急時ではなく、平常時にもデジタルインフラを構築する効果がある」とし、経済産業省の進めるライフライン物資供給網強靱化実証事業への協力を要請した。