流通4団体の合同による第1回「流通BMS普及推進説明会」を開催(東京)

流通BMSの本格化が期待される2012年。日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、(一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体合同による「流通BMS普及推進説明会」が2012年1月25日、東京港区のSCSK青山ビルで開催された。

説明会では、流通BMSの概要や普及状況、日本スーパーマーケット協会による普及促進の取り組みなどを紹介。サミット株式会社や株式会社ヤオコーによる導入事例(流通4団体が推奨するクラウド型の流通BMSサービス「スマクラ」)の講演や、経済産業省によるSCMの災害対策に関する特別講演が行われた。会場には流通業界、情報システム業界に関わる企業・団体、マスコミから200名あまりが駆けつけ、特に、関東圏を中心とした小売業62社が、それぞれの講演を熱心に聞き入っていた。

講演:「流通BMS普及促進事業について」
日本スーパーマーケット協会 専務理事 大塚 明

冒頭で日本スーパーマーケット協会 専務理事の大塚明氏は「なぜ今、流通BMSの導入を検討すべきなのか」について解説した。まず、スーパーマーケットを取り巻く環境の変化に言及し、「顧客層は従来のファミリー型から個人型への転換が急速に進んでいる」と説明。そのうえで「利益追求型から、需要創出型へと転換を図るためには、商品力やサービス力の強化が欠かせない」と説いた。

これらの課題を解決するためには「流通BMSを導入してEDIを標準化し、業務の負担を軽減することが必要」と大塚氏は強調。「ITインフラを共有化するクラウドコンピューティングを利用することで、低コストかつ簡単にメリットが得られる」と語った。

講演:「流通BMSの概要と普及状況」
財団法人流通システム開発センター 研究開発部 部長 坂本 尚登氏

続いて財団法人流通システム開発センター 研究開発部 部長の坂本尚登氏が、流通BMSの概要と普及状況を説明した。2012年1月現在、流通BMSの導入を公開している企業数は小売業で109社。うちスーパーマーケットが85社を占めるという。2011年には経済産業省の支援のもとで「製・配・販連携協議会」が設立され、その中の流通BMS導入推進ワーキンググループで「流通BMS導入宣言書」が50社の賛同によって発表された。「流通BMS導入宣言書」では、各社で流通BMS導入・拡大計画を策定し、製・配・販連携協議会を通じて公表するとしていることから「2012年は流通BMSの導入が一気に進むだろう」と坂本氏は予測した。

講演:「事業基盤の強化と流通BMSの導入について」
サミット株式会社 情報システム部 マネージャー 長尾 建氏

流通BMSを導入した小売事業者の事例として、サミット株式会社 情報システム部 マネジャーの長尾建氏が講演を行った。サミットでは、店舗数が急速に増え、既存の2カ所のセンターが手狭になったことから、在庫型の第3センターの増設を決定。そのやり取りに新しいフォーマットを採用することを契機に流通BMSを導入し、2011年11月から大手を中心とした12社の取引先とデータ交換を行っている。導入の目的を長尾氏は「将来を見据えたインフラ基盤を構築すること、災害に強い通信インフラの構築、取引先との連携の3つ」と説明した。

流通BMS対応前、サミットはJCA手順により、取引先とVAN経由でデータ交換を行ってきた。新システムでは既存のVANに変わり、流通4団体が推奨するクラウド型の流通BMSサービス「スマクラ」を採用し、初期構築費用を大幅に削減した。導入期間は約4カ月で、自社の担当者2名と、SE4名の体制で行ったという。 サミット本部とスマクラの間は、現行のJCAレイアウトを活用することで基幹システムの改修を最小化。JCAフォーマットのデータは、スマクラ側で流通BMS形式に変換し、自社の在庫センターや取引先と各種データの交換を行っている。
サミットでは流通BMSの導入に先立つ2011年4月、基幹システムをSAP ERPで統合するとともに、それと連携するマスター管理システムや特売管理システムを構築し、データ連携を強化している。長尾氏は「流通BMSの導入は基幹システム構築の延長線上にあるもので、基幹システムからEDIシステムまで、すべてを標準化したことで取引先とWin-Winの関係を構築することができた」と語って講演を終えた。

講演:「協会の流通BMS普及推進【スマクラ】の取り組みに関して」
日本スーパーマーケット協会 流通推進部 篠原 豊

続いて、日本スーパーマーケット協会流通推進部の篠原豊氏が流通4団体の取り組みについて説明した。まず篠原氏は、大手企業による寡占化率の低いスーパーマーケット業界における、流通BMS普及の鍵は、中堅中小スーパーマーケットの取り組みにあると訴えた。 流通4団体では、小売業で流通BMSの導入が進まない理由を「メリットが不明」「経営者の理解不足」「取引先の対応問題」「コスト」「人員不足」「ノウハウ不足」の6つがあると分析。その中で、「コスト」「人員不足」「ノウハウ不足」の3つの課題を流通4団体でカバーするため、推奨EDIシステムとしてSCSKのスーパーマーケット・クラウドEDIサービス「スマクラ」を指定した。SCSKを選定した理由を篠原氏は「導入実績、導入サポートへの期待、安価な導入費用と運用費用、強固な事業基盤などを総合的に評価した」と説明。そして「企業間で共同利用するスマクラを企業間の取引ベースとして流通BMS対応を早期に実施し、業務コスト削減や取引先との関係強調に取り組むことが、競争を戦い抜くためには重要である」と強調した。

講演:「流通BMS導入メリットと将来の活用戦略」
株式会社ヤオコー 営業企画部 システム管理担当部長 神藤 信弘氏

コーヒーブレイクを経て、株式会社ヤオコー 営業企画部 システム管理担当部長の神藤信弘氏が同社の事例について講演した。「製・配・販連携協議会」の参加企業であるヤオコーは「流通BMS導入宣言書」への賛同後、流通BMSの導入を決定。2012年からの本稼働に向けて準備を進めている。導入の目的を神藤氏は「今後のMD業務戦略との連携を見据えたサポート体制を強化するため」と説明した。
流通BMS導入にあたりヤオコーは、技術面とコストを考慮し、流通4団体が推奨するクラウド型の流通BMSサービス「スマクラ」を採用した。選定の決め手を神藤氏は「導入から運用までの手厚いサポート」と語り、自社の担当1名でテスト導入を終えたことを明らかにした。さらに流通BMS導入のメリットについて神藤氏は「従来、取引先はヤオコー本体と、2カ所のセンターで通信先を切り替える必要があったが、統合により1回の通信ですむようになった。また、通信時間は送受信合わせて1時間弱の短縮が実現し、取引先への納品時間の前倒しが実現している」と語った。

ヤオコーでは今後、2012年9月までにグロサリー取引先約70社、同年末までに生鮮取引先約100社に展開する予定だという。最後に神藤氏は「卸・メーカーにPOSデータ、在庫データ、商品マスターデータなどを即時に提供し、顧客提供価格の低コスト化を進めることが重要」と強調。さらに「中堅・中小の小売業者にとって、大手小売業者のノウハウがそのまま使える流通BMSサービスは、会社全体の発展につながる」と語り、講演を締めくくった。

特別講演:「消費財サプライチェーンに関する大規模災害時の課題と今後の取り組み」
経済産業省 商務流通グループ 流通政策課 課長補佐 妹尾 善多氏

特別講演では、経済産業省 商務流通グループ流通政策課 課長補佐の妹尾善多氏が、現在経済産業所が主導で実施している「ライフライン物資供給網強靱化実証事業」について説明した。2011年3月の東日本大震災では、生産必需品の不足が各地で長期間にわたり発生した。こうした課題を受けて経済産業省では、今後の震災や首都直下型地震に備えて、生活必需品を整然と配送・在庫配置を行うデジタル・インフラ基盤の必要性を認識。小売業、卸売業、メーカーなどから販売・在庫情報を収集・整理する基幹システムを構築し、緊急時には政府・自治体が需給バランスを把握し、消費者に公開することを目的とした事業検証を始めている。 「基幹システムでは、小売業、卸売業、メーカーからデータの提供を受ける必要がありますが、データの送信については、標準化された流通BMSのフォーマットに則った形式にする予定」と妹尾氏。収集するデータは、メーカーの生産情報や在庫情報、卸売業の在庫情報、小売業の販売情報、開店情報などで、これらを共有することで政府や自治体は自衛隊などのルートを利用して支援物資を円滑に被災地に輸送できるようになるという。最後に妹尾氏は「緊急時向けの取り組みは、平常時のサプライチェーン・マネジメントにも有効で、消費者に対して低価格で高品質の商品を提供することにつながる」と語った。

特別講演:「流通BMSの意義」
農林水産省 食糧産業局 食品小売サービス課 課長補佐 斎藤 勇一氏

最後に農林水産省 食料産業局 食品小売サービス課 課長補佐の斎藤勇一氏が説明会全体について「農水省でも卸売業者やメーカーと接する中で、流通BMSの実態についてきちんと説明し、普及推進に向けた協力をしていきたい」と述べ、第1回「流通BMS普及推進説明会」は幕を閉じた。