流通4団体の合同による2013年度「流通BMS活用説明会」を開催(東京)

流通BMSが小売業におけるスタンダードの受発注形式となり、本格的な活用時期を迎えた2013年。昨年実施していた流通4団体合同による「流通BMS普及推進説明会」が、装いも新たに「流通BMS活用説明会」へと進化。その1回目となる説明会が2013年1月25日、東京港区のSCSK青山ビルで開催された。

説明会では、日本スーパーマーケット協会専務理事の大塚明氏が10年先のスーパーマーケットの未来を予測した「シナリオ2020」について講演。その他、セイミヤ、旭食品、イオングループの導入事例が紹介された。昨年に続き、今年も多くの流通業界、情報システム業界に関わる企業・団体が参加し、会場は熱気に包まれた。

基調講演:「シナリオ2020」
日本スーパーマーケット協会 専務理事 大塚明 氏

オープニングを飾る基調講演では、日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事が、2020年のスーパーマーケットのあるべき姿を展望した。冒頭で「日本の小売業が近代化して約60年が経ち、後追い型のビジネスモデルから、未来志向のビジネスモデルに変革すべき」と指摘。日本スーパーマーケット協会が2020年のスーパーマーケット業界の課題と展望をまとめた「シナリオ2020」について解説した。

大塚氏は小売業界が目指す未来について「個性の時代へと突入した今、消費に自己発見や自己実現を求める顧客の変化にどう対応していくかがカギ」と説明。その中で、小売業に重大な影響を及ぼす要因として、「顧客の変化」、「法令の新設・改廃」、「ITの進化」の3つを挙げた。そして、将来に大きく影響を及ぼす要素に「人口の減少」があるとして、「未来を見据えるなら、モノの消費からコトの消費へと脱皮を図ることが重要」と強調した。

また、さまざまな環境変化を受けて、従来の拡大型生産モデルは終焉を迎えると語り、こうした現状を打破するための処方箋として「脱コモディティ化を一刻も早く実現し、生活を維持する消費から、楽しむ消費へと転換を図ることが重要」と指摘。その中で、2013年の課題のひとつとしてIT戦略の重要性を説いた。

最後に大塚氏は「インフラ基盤など、業界で共有できるものは標準化し、サービスと売り場作りで競争力を高めていくことが、2020年を生き残るための戦略」と語り、講演を締めくくった。

講演:「流通BMS、新しい標準化への取組み」
一般財団法人 流通システム開発センター 研究開発部 主任研究員 坂本真人 氏

続いて、一般財団法人流通システム開発センターの坂本真人氏が流通BMSの概要を解説した。最新の普及状況については、流通BMSの導入企業名公開社数が小売業で135社と説明。卸・メーカーについてはITベンダーの導入実績から2012年末で5232社が導入済みと語った。

さらに2010年に製・配・販連絡協議会で発表された「流通BMS導入宣言」を受け、導入が急ピッチで進みつつあると解説。最後に「通信インフラが統合されれば、流通業界の枠を超えて適用分野が拡大し、さらなる効果拡大が期待できる」と展望を述べた。

講演:「顧客満足と企業の成長を支援するシステム構築を目指して」
株式会社セイミヤ 取締役 情報システム部 部長 勢司秀夫 氏

流通BMSの導入事例として、茨城県と千葉県で12店舗のスーパーマーケット(SM)と、5店舗の大型スーパーマーケット(SSM)を運営する株式会社セイミヤの勢司秀夫氏が、同社の実績を紹介した。

セイミヤでは2008年から基幹システムのダウンサイジング化に着手。その最終フェーズにおいて既存EDIを流通BMSに切り替えた。勢司氏は流通BMS導入の狙いについて「次世代の発注システムの視点から、小売業主体で作られた仕組みを導入したかった」と明かす。

EDIシステムは、初期費用、導入実績、サービス体制などを評価した中から「スマクラ」を採用。2011年8月から本稼働を開始している。流通BMS対応している取引先は2012年10月時点で40社。流通BMS化率は取引先全体の25%だが、Web-EDIを含めると158社。伝票枚数のEDI化率は、90%を超えているという。

流通BMSの導入効果については、コスト削減や時間短縮と合わせて、標準化の実現が最も大きいと指摘。「流通BMSは普及率が上がるにつれて価値は高まっていく。顧客満足という理念のもと、製配販の流通コストを下げる努力が必要だ」と述べた。

講演:「旭食品における流通BMSへの取組み」
旭食品株式会社 情報システム本部 情報管理部 部長 竹内恒夫 氏

コーヒーブレイクをはさみ、食品卸大手の旭食品株式会社の竹内恒夫氏が、同社における流通BMSの取り組みと、卸におけるメリットを紹介した。

旭食品では、全国の支社、支店に分散していた受発注システムを1999年にホスト系で統合。2007年には、EDI領域を「新集配信システム」として切り出し、流通BMSとWeb-EDIによる自動化対応を実現した。早期から流通BMSに取り組んだ理由を竹内氏は「流通BMSにいち早く対応することで、業界優位性をアピールしたかった」と振り返った。流通BMSに対応している取引先数は、2012年12月時点で35社、Web-EDIへの対応取引先と合わせて70社。残りの1000社以上は、JCA手順ほかでの受注が続いているという。

導入効果については回線の高速化を挙げ、1000件の明細送受信にかかる時間が0.6秒と瞬時に終わることを説明。取引先追加時の導入期間についても、「JCA手順で約10日かかるところが、流通BMSなら4日間で終わる」と導入コストの低減効果を強調した。また、最も大きかった効果として、伝票用プリンターの導入コスト削減を挙げ、「5年間の導入費、保守費の総額が約2億5000万円削減できた」と語った。

今後の展開については、取扱いメッセージの拡大などを挙げ、期待事項として標準化領域のさらなる拡大や流通BMSの普及促進を要望して講演を終えた。

講演:「【スマクラ】を活用した流通BMSの導入」
日本スーパーマーケット協会 流通推進部 篠原豊 氏

次に日本スーパーマーケット協会の篠原豊氏が「スマクラ」について説明した。まず、小売業の大半を占めるスーパーマーケットが、全体で流通BMSへの取り組むことで普及が促進されると強調。流通4団体が推奨VANを用意し、導入に二の足を踏む企業を支援すると語った。

流通4団体による普及活動の成果は徐々に現れており、小売業に対して実施した意識調査においても、多くが流通BMSの有用性を認識している。しかしその一方で、流通BMS導入の障害には「対応できる取引先が少ない」「投資対効果が不明」という意見があることを紹介。「対応できる取引先が少ない」については、加工食品卸協会が加盟各社の営業担当者を教育していること、卸協会と小売協会で導入企業のマッチングを行っていることを説明した。「投資対効果が不明」という懸念事項については「スマクラ」の利用によりメリットが得られるとし、最後に「業界全体で全体最適化を促進することが重要」と呼びかけた。

講演:「イオングループにおける全国での流通BMSの取組み」
イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤清 氏

続いて、イオンアイビス株式会社の北澤清氏が、イオングループにおける流通BMSに対する取り組みについて講演した。イオングループでは、2012年12月末までに流通BMSに完全移行し、2013年にはJCA手順のEDIシステムを停止する移行方針を掲げてきた。北澤氏は2013年1月末時点の状況について「EDIによる取引先約2000社のうち、流通BMSの完全対応を終えている企業は約1400社、テスト中の企業は約600社で、達成率は92.5%。未対応または現在状況を確認している取引先は約160社だが、元々データ交換の量が少なく、FAXでも十分に対応できることから、ほとんど影響は出ていない」と語った。現在も、流通BMSへの移行は同社の商品部などを通して呼びかけており、今後さらに増えることを見込んでいる。

2012年12月末の完全移行直前には、駆け込み利用も多かったという。その結果、12月の請求データの受信件数は従来の3倍に増加したが、こうした駆け込み対応についても、イオングループは切り替えのタイミングを工夫するなどして、トラブルなく乗り切った。その一方で、大量の手書伝票への対応など、新たな課題も明らかになった。そのため、今後は出荷始まりデータの作成など、対応を強化していく方針を明らかにしている。

流通BMSの活用については、商品マスター連携や、ネットスーパー用の商品画像の標準化などに期待を寄せ「流通BMSは製配販協働でサプライチェーン全体の効率化を実現させる取り組みであることから、早期導入をお願いしたい」と呼びかけた。

挨拶:「いまこそ製配販の協力が必要な時」
一般社団法人 日本加工食品卸協会 専務理事 奥山則康 氏

最後に、日本加工食品卸協会の奥山則康専務理事が挨拶。「従来、受け身にまわることが多かった卸だが、今後は小売業と前向きな姿勢で向き合うことが重要」と語り、「卸の立場から流通BMSの普及に積極的に関わっていく」と決意を述べた。その具体策として、流通BMS普及に向けたイベントへの積極的な参画、日本加工食品卸協会所属の流通BMS対応企業の開示、日本加工食品卸協会加盟各社の営業担当者への流通BMSに対する教育の実施の3つを挙げ、「流通4団体との協働体制で流通BMSの普及拡大を支援していく」と語った。