北海道CSK ITフォーラム2012(第5回「流通BMS普及推進説明会」)を開催(札幌)

 

2012年7月24日、北海道CSK主催の「ITフォーラム2012」において、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、(一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体合同による第5回「流通BMS普及推進説明会」が開催され、日本スーパーマーケット協会 専務理事の大塚明氏による基調講演や、導入事例紹介、流通BMSの普及に関する説明などが行われた。

基調講演:『シナリオ2020』-2020年のスーパーマーケット業界の展望と課題-
日本スーパーマーケット協会 専務理事 大塚明

基調講演では、日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事が、10年後のスーパーマーケットのあり方について、1時間にわたって講演した。大塚氏はまず「小売業界はこれから10年、お手本なき時代に突入する。厳しい競争を勝ち残っていくためには、よその店のモノマネからいち早く脱却し、オリジナル戦略を考えなければならない」と危機感を口にし、「もの余りの時代」から「もの離れの時代」に突入した今、企業としてどのように売上げを作っていくかが重要であると指摘した。

現在の小売業が置かれている課題について大塚氏は、コスト構造の高止まり、短いライフサイクル、競合の激化、顧客の変化の4つを挙げ、「今後、消費税の増税や、パート社員の厚生年金加入などにより、小売業のコスト構造が高くなっていくのは明らかだ。また、1991年に400万円を超えていた坪単価が今では300万円を割り、利益が出る店と出ない店の2極化が進んでいる。さらに顧客が変化した結果、ものの安さだけでなく、産地、品質、用途などの情報を求めるようになってきた」と説明する。

10年後の未来について大塚氏は、日本スーパーマーケット協会が独自の研究と調査で2020年のスーパーマーケット業界の課題と展望をまとめた「シナリオ2020(要約版)」をもとに解説。「今後、小売業を変革する大きな要因となるのは、顧客とITと法律の3つ」と強調した。

都道府県の人口は沖縄県を除いて減り続け、今後は単身世帯や高齢者世帯がますます増えることは明らかだ。それを受けて大塚氏は「ファミリー層がメインターゲットだったスーパーマーケットは、よりパーソナルな方向にシフトせざるを得ない。こうした顧客にどう対応していくかが重要だ」と語った。

さらに大きな影響を及ぼすのがITであると指摘。「デジタル化が進み、若い世代を中心に宅配の新聞を購読しない家庭が増えた。その結果、スーパーマーケットの生命線であるチラシマーケティングが限定的となり、特売のあり方も変わってくる」と強調した。さらに10年後のスーパーマーケットの店内は、デジタルサイネージが基本となり、スマートフォンを使った販促情報の配信なども当たり前になると予測する。

厳しさを増す状況下、売上げを伸ばし続けるためにはどうしたらよいか? そんな疑問に大塚氏は有力なスーパーマーケットの成功事例を挙げ、「価格志向」「価値志向」「市場深耕」の3つのタイプを、都市とローカルの2軸に分けて分類。「価格の安さを追究するグループだけでなく、今までの低価格路線とは一線を画し、買い物の楽しさやメニューの多さなどで顧客の支持を集めるスーパーマーケットが急速に存在感を高めている」と語った。

今後のスーパーマーケットのあり方について大塚氏は「スーパーマーケットは顧客との対面販売から始まり、大量生産・大量販売、セグメントマーケティングを経て進化してきたが、これからは顧客と1対1で向き合うリレーションマーケティングに再び回帰するだろう。流通本来の業務や戦略を考えるためには、インフラ基盤を流通BMSで標準化して業界全体で共有化し、それぞれが低コスト体質を維持していくことが大切」と強調して講演を終えた。

講演:『流通BMS普及状況と今後の活用方法』
-制定経緯、標準化の内容と効果、普及状況、今後の展望など-
一般財団法人 流通システム開発センター 流通システム標準普及推進協議会 事務局長 坂本尚登 氏

コーヒーブレイクを経て、一般財団法人流通システム開発センターの坂本尚登氏が流通BMSの概要と普及状況について解説した。さらに流通BMS協議会が昨年実施したアンケートの結果から、小売業の73%が流通BMSに関心を持っていることを明らかにし、2012年には導入企業が急ピッチで増えると予測。「最新の調査では流通BMS導入済みの卸・メーカーは4000社以上となり、直近半年で600社以上のペースで増加している」と語った。

講演:『流通BMS導入メリットと将来の活用戦略』
-流通BMSの早期稼働メリットと次世代EDI活用による卸・メーカーとの協力体制の深化-
株式会社ヤオコー 営業企画部 システム管理担当部長 神藤信弘 氏

続いて、埼玉県、千葉県、群馬県を中心に118店舗の食品スーパーマーケットを運営するヤオコーの神藤信弘氏が、同社の流通BMSの導入について語った。MD戦略の強化を模索していたヤオコーは、取引先に負担をかけないインフラとして流通BMSを選択。技術面とコストの課題を検討した結果、初期投資が不要でスモールスタートが可能なサービス利用型の「スマクラ」を採用した。

パイロット導入までは、検討フェーズで2カ月、取引先企業における導入フェーズで3カ月の合計5カ月を要し、6カ月目から取引先展開となった。神藤氏は「ヤオコー本部は方針策定や確認、承認などが主な作業で、要件定義、設計、マッピング、取引先テストはスマクラ側にすべて任せることができるため、負担なく移行できた」と振り返る。

導入メリットについては「今まで取引先側で通信先をその都度切り替えていただいていたが、スマクラによって通信が一元化された結果、取引先の負担が大幅に減った」と指摘。また、通信時間の短縮が実現し、ある取引先で今まで30分かかっていた発注データの受信時間が5分に短縮されたという。さらに受信時刻も30分程度の前倒しが可能となり、送受信合わせて約1時間弱の短縮効果が見られた。

2012年1月から本格的な流通BMSへの移行を開始したヤオコーは、2012年9月までにグロッサリー取引先約70社の流通BMS移行を完了する予定だ。さらに2012年9月から生鮮メッセージの検討を開始し、2012年度下期中には生鮮取引先約100社に展開することを明らかにしている。最後に神藤氏は「2012年はヤオコーをはじめ、小売業各社が流通BMSの導入拡大に本格的に着手しているため、今年こそが切り替えのチャンス。流通BMSは、ペーパレス化、請求レス化などの短期的なメリットばかりでなく、ロジスティクスの標準化が進むことでコストダウンが実現するなど、長期的なメリットも生む。小売業のIT部門は、基幹システムのおもりという役割からいち早く脱却し、顧客、店舗、MDの差別化に貢献することで社内における存在価値を高めて欲しい」とエールを送って講演を終えた。