流通4団体の合同による第4回「流通BMS普及推進説明会」を開催(大阪)

 

日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、(一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体合同による第4回流通4団体合同「流通BMS普及推進説明会」が2012年5月31日、大阪市のTKP大阪梅田ビジネスセンターで開催され、流通BMS普及促進事業の説明や、各企業の導入事例紹介、経済産業省による特別講演などが行われた。

講演『流通BMS普及促進事業について』
-なぜ今、流通BMSの導入を検討すべきなのか
オール日本スーパーマーケット協会 専務理事 松本光雄

冒頭でオール日本スーパーマーケット協会の松本光雄氏は、昨今取り上げられている企業合併や業務提携の話題に触れ、流通業界では「商品の共同化・共通化」「プライベートブランドの共同開発」「業務の一部連携」が生き残るための企業戦略であることを説明。それを踏まえたうえで、「業務の標準を実現する流通BMSは、収益構造の変化にも貢献する。負担がかからず、即効性が高い流通BMSを導入する意義は非常に大きい」と語った。

講演:『流通BMSの概要と普及状況』
-制定経緯、標準化の内容と効果、普及状況、今後の展望など
一般財団法人 流通システム開発センター 研究開発部 研究員 梶田瞳 氏

続いて一般財団法人流通システム開発センターの梶田瞳氏が、流通BMSの概要と普及状況について説明した。梶田氏は、昨年実施したアンケートで小売業の73%が流通BMSに関心を持っていることを明らかにし、2011年に製・配・販連携協議会が「流通BMS導入宣言書」を発表したことで、導入企業が急ピッチで増えていると指摘した。流通BMSの導入方法としては、サーバ型、クライアント型、SaaS(ASP)型の3形態があるとし、現行のWeb-EDIについては「流通BMSの補完手段であり、Web-EDIを提供する場合は流通BMSの手順を同時に提供すること」という流通BMS協議会の基本方針を示した。

講演:『顧客満足と企業の成長を支援するシステム構築を目指して』
-流通BMSの導入の効果とその意義について
株式会社セイミヤ 取締役 情報システム部 部長 勢司秀夫 氏

茨城県と千葉県で12店舗のスーパーマーケット(SM)と、5店舗の大型スーパーマーケット(SSM)を運営する株式会社セイミヤの勢司秀夫氏は、2010年9月から同社が取り組んできた流通BMSの導入効果と意義について語った。導入以前の課題について勢司氏は、モデムの保守、通信時間の長さ、従量課金による取引先への負担など、JCA手順の限界を指摘。「流通BMSについては、次世代ワーキンググループの動向に注目し、制定メンバーの導入状況を注意深く見守ってきた。そして、取引先のポジティブな声を参考に、最終的な導入を決断した」と語った。

EDIシステムは、初期費用、導入実績、サービス体制などを評価した中から、流通4団体が推奨するクラウド型流通BMSサービス「スマクラ」を採用。2011年8月から本稼働を開始している。流通BMSに対応できない取引先に対しては、流通BMSのガイドラインに準拠したWeb-EDI 「スマクラ for Web」によって補完した。2012年6月現在、流通BMS対応している取引先は58社、Web-EDI対応が105社で、流通BMS化率は26%だ。ただし、取引金額でみると流通BMSに対応した取引先で50%以上を占めているという。
流通BMSの導入効果については、コスト削減や時間短縮と合わせて、業務の標準化の実現が最も大きいと指摘。「流通BMSは普及率が上がるにつれて価値は高まっていく。流通BMSの導入意義は、製配販の全体最適によって徹底的に合理化を図り、本来の流通政策で競争力を高めていくことにある。勝ち組企業と言われる大手量販店が策定に関わった流通BMSにはノウハウがぎっしり詰まっているため、中小の小売業が導入するメリットは計り知れない」と語った。

講演『【スマクラ】を活用した流通BMS導入事例』
-流通BMS導入事例の紹介「ヤオコー様」「サミット様」
日本スーパーマーケット協会 流通推進部 篠原豊

続いて、日本スーパーマーケット協会の篠原豊氏が、スマクラを導入した小売事業者として、サミット株式会社と株式会社ヤオコーの事例を紹介。両社ともEDIシステムの入れ替えだけでなく、業務基盤の整備、MD業務の強化、BCP(事業継続)対策などを合わせて実現したことを強調した。

また、スマクラのメリットとして、先行導入企業の実績に基づくコンサルティングと、導入時の要件定義や取引先説明会、取引先問い合わせ対応などの支援機能が提供され、負荷なく導入できることを強調。「日本スーパーマーケット協会の提供方針として、小売だけのメリットだけでなく、卸、メーカーの負担減も考慮しながら課題を解決していく。最終的には流通業界全体が流通BMSに移行していくことは間違いないので、できるだけ早い段階で切り替えて欲しい」と呼びかけた。

講演:『卸業における流通BMSの導入効果』
-流通BMS導入による卸業の効果を具体的に紹介
株式会社山星屋 情報システム部 課長代理 古田健太郎 氏

コーヒーブレイクを挟み、菓子食品の卸業務を営む株式会社山星屋の古田健太郎氏が、現在24社の取引先と行っている流通BMSによるデータ交換について講演した。山星屋は、2007年に次世代EDI実証プロジェクトに参加。サーバ型のEDIシステムを自社内に構築し、大手スーパー1社とデータ交換を開始した。その後も順次取引先数を増やし、2012年6月時点で24社に対応し、2012年中には新たに5社の対応を予定しているという。古田氏は「全取引の中で、流通BMSが占める割合は伝票ベースで4.03%。しかし、取引先のグループ全体で換算すると比率は34.76%と跳ね上がり、将来の伸びが期待できる」と説明した。

導入効果については、インターネット利用による通信速度の高速化、通信の安定性向上、通信コスト削減などの4つを挙げ、「JCA手順で2時間かかっていた取引先の場合、流通BMSで9分程度に短縮できる見込みがたった。また、JCA手順ではデータ受信中に通信が中断すると最初からやり直す必要があったが、流通BMSでは通信が切断されることがないため、データ量に関係なく計画通りに出荷できるようになった」と語った。

さらに標準メッセージの利用効果として、システムの共通化、システム導入工数の削減などを挙げ、取引先ごとに行っていたシステムの仕様確認、調整などの時間短縮が実現し、システム導入までの工数を従来比で40%削減できたことを明らかにした。最後に古田氏は「流通BMSは小売業と卸売業の双方にメリットがあり、卸売業にとっては導入する取引先が増えるほど効果が最大化する。そのためにも今後の導入促進には大いに期待したい」と語って講演を終えた。

講演:『イオングループにおける全国と西日本での流通BMSの取り組み』
-流通BMSへ2012年末完全移行を目指す
イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤清 氏

続いて、イオングループのIT業務を担当するイオンアイビス株式会社の北澤清氏が、同グループの流通BMSに対する取り組みについて講演した。イオングループでは、2011年に開かれた製・配・販連携フォーラムの「流通BMS導入宣言」を受けて移行方針を策定。2012年12月末までに流通BMSに完全移行し、2013年にはJCA手順のEDIシステムを停止する方針を打ち出している。移行完了日を明確に定めたことに対して北澤氏は「早期のサプライチェーン全体最適化の推進」を第一に挙げた。

2012年4月時点の導入実績は、本番稼動が1188社で、並行テスト中が310社。2011年の下期には1698社に対して取引先説明会を実施して理解を呼びかけたという。流通BMSのバージョンはVer1.3とし、旧バージョンも生鮮Ver1.2以外は対応可能とすることで導入のハードルを下げている。導入タイプもサーバ型、クライアント型、SaaS型のいずれにも対応し、SaaS型においてはベンダーを取引先が自由に選べるようにして役割分担を明確化した。

最後に流通BMS導入への期待について北澤氏は「流通BMSは、業務の効率化を進めるだけでなく、生活者の満足度向上に貢献する。商品マスターや販売実績との連携、ネットスーパー用の商品画像との連携など、流通BMSが貢献できる領域はかなり広い。そのためにも流通BMSの早期導入をお願いしたい」と語った。

特別講演:『消費財サプライチェーンに関する大規模災害時の課題と今後の取り組み』
経済産業省 商務流通グループ 流通政策課 係長 草野百合子 氏

特別講演では、経済産業省 商務流通グループ 流通政策課の草野百合子氏が、「大規模災害時のデジタル・インフラ実証事業」について説明した。2011年の東日本大震災では、緊急支援物資の供給体制の問題が明らかになった。今後想定される南海トラフ巨大地震や、首都直下地震による被害を考慮すると、災害時を想定したデジタル・インフラの構築が必要だ。そこで、経済産業省ではデジタル・インフラの実証事業を2012年度から3カ年計画で実施する予定で、システムへのデータ送信に流通BMSの採用を想定している。草野氏は、デジタル・インフラの整備に向けて協力を要請すると共に、「平常時においても、小売店は店舗での最適な品揃えや効果的な販促計画の立案につなげることができる。メーカーにとっても季節品等の店頭販売の初動推移を捕捉することで生産調整や在庫調整が可能となる」とメリットを強調した。

ご挨拶:『総括』
オール日本スーパーマーケット協会 総務部長 中村伸一郎

最後にオール日本スーパーマーケット協会の中村伸一郎氏が講演全体を振り返り、流通BMSの問題点については、流通システム開発センターとともに引き続き協議を重ねていくと語った。そして「流通BMSのメリットと課題を各企業がそれぞれ判断し、有効的に活用して欲しい」と呼びかけて幕を閉じた。