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国税庁OBの袖山税理士が解説「電子取引データにおける令和3年度改正電帳法の宥恕規定」(2023/8/23更新)

電子化に向けてのお役立ち情報:国税庁OBの袖山税理士が解説「電子取引データにおける令和3年度改正電帳法の宥恕規定」
筆者:袖山喜久造(そでやまきくぞう) SKJ総合税理士事務所 所長・税理士
国税庁調査課、東京国税局調査部において長年大規模法人の法人税調査等に従事。在職中、電子帳簿保存法担当の情報技術専門官として、調査、納税者指導、職員教育等に携わる。平成24年7月に国税を退職し、同年11月SKJ総合税理士事務所を開設。税務コンサルティングのほか企業電子化、システムコンサルティングを行う。
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令和3年12月10日に令和4年度の税制改正大綱、令和3年12月27日に経過措置に係る省令が公布されました。本稿では、電子取引データにおける令和3年度改正電帳法の宥恕規定ついて解説します。

令和3年度改正電帳法の宥恕規定について

令和3年度の電帳法改正前は、保存すべき場所に保存するべき期間中、整然とした形式で明瞭な状態で当該データを書面に出力し整理保存する場合には、電子取引に係るデータは、書面で保存することも認められていましたが、改正された電帳法第7条では、電子取引データを書面に出力して書面で保存することが廃止されたので、原則として、令和4年1月1日からの電子取引データは、必ずデータで保存する必要があります。

ただし、令和3年12月27日に公布された財務省令第80号において、以下のとおり電子取引データの保存についての宥恕規定が設けられました。改正法令対応で、電子取引データを保存することのみを検討することは、本来の電子化の目的とすることではないはずです。宥恕規定の期限である、令和5年12月31日までの約2年程度の間に、各企業の電子化の在り方をじっくり検討し、目的に則した電子化の実現を行っていただければと思います。

また、今回公布されている宥恕規定は、電子取引データの保存に代えて書面による保存を限定的に容認するものであり、EDI取引によるデータなど、書面に出力し保存することが現実的にできない場合などに適用されることはありません。

(経過措置)
第二条
3 この省令の施行の日から令和五年十二月三十一日までの間に電子取引を行う場合における新令第四条第三項の規定の適用については、同項中「証明したとき」とあるのは「証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているとき」と、同項ただし書中「当該事情」とあるのは「これらの事情」とする。

電帳法施行規則第4条第3項
3 法第七条に規定する保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により、同条に規定する財務省令で定めるところに従って当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる。ただし、これらの事情が生じなかったとした場合において、当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない。

当該電子取引データの書面保存についての宥恕規定は、やむを得ない場合の措置として容認されているものであり、法令の適用を猶予するものではありません。法令が宥恕される期間は、令和5年12月31日までであり、それまでの間、電子取引データを電帳法で定められた要件に従って保存できないことについて、所轄税務署長が認めるやむを得ない場合に、当該電子取引データを書面により保存できるものとされています。

なお、電子取引データを書面に出力し、書面で保有する場合には、事業年度別、取引ごと、あるいは、取引先ごと、書類の種類ごと等のように整理保存を行い、税務調査等において提示を求められた場合には、速やかに提示できることが求められます。

「所轄税務署長が認めるやむを得ない事情」とは、以下のケースが考えられます。

➀電子取引データを保存するシステムの導入が施行日に間に合わない ②電子取引データの保存に係る社内の運用体制が施行日までに整備できない ③災害等の納税者の責に帰さない事情により保存できない やむを得ない事情

これらの事情が生じなかったとされた場合には、宥恕規定の適用がされることはありません。

したがって、電子化の検討の過程において、電子取引データを電帳法の要件に従って保存ができる部分から、順次データで保存する検討をすることをお勧めします。

令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消要因となり得ます。

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