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未来調達研究所コラム「【いま知っておくべき調達・購買を解説】製造業の直接材の見積業務の効率化」(2026/4/30更新)

未来調達研究所コラム「【いま知っておくべき調達・購買を解説】製造業の直接材の見積業務の効率化」
筆者:坂口孝則 未来調達研究所株式会社 経営コンサルタント
大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。調達・購買、原価企画を担当。バイヤーとして担当したのは200社以上。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買実践塾』『だったら、世界一の購買部をつくってみろ!』『The調達・仕入れの基本帳77』『結局どうすりゃ、コストは下がるんですか?』(ともに日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ0円iPhoneの正体』(ともに幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』『思考停止ビジネス』(ともに徳間書店刊)など20冊を超える。
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デジタル遅れによりまわらない調達現場から

「あんたねえ。いまはそれどころじゃないのよ」。
私は企業の調達部長や役員の命を受けて企業に訪問するケースが多い。大きな見取り図を描いて終わりにするタイプのコンサルティングではなく、現場に密着する。しかし、調達戦略の構築やら、サプライチェーンのリスク管理強化などを私がもちかけると現場担当者から返ってくる反応がこれだ。上は調達業務の高度化を期待するが、現場は多忙で手を広げられないと。

その元凶とはとにかく作業が多いという。案件自体が増えたのにくわえて、ガバナンスやコスト低減のプレッシャーから見積書を取得する件数が増えた。ともなってシステム外でExcelや紙ベースの業務も増加する。さらに問い合わせの電話やメールも加算される。

設計や生産など他部門との調整に追われるなか、従来のアナログな対応ばかりで疲労することでモチベーションの低下にもつながっている。さらに外部のコンサルタントにまで冷たくなる。膨大な工数がかかっており、これでは現場の業務負荷の限界に近づく。

そしてこの業務負荷は、人材の流出にも直結する。若手社員にとって、いや誰にとっても、Excelの転記とメールの往復に追われる業務は魅力的だろうか。スキルアップを感じられないのだろう。調達部門は社内の他部門からも異動したがらない、と聞かされる場合が多い。調達部門の中途採用に苦戦している企業は多い。最適なDX化は、いま現場にいる調達担当者への訴求性向上だけではなく、将来の人材確保にもつながる。

現在、見積取得のDX化が求められている理由

さきほどシステム外の作業が多い、と説明した。ということは必然的に属人化となる。担当者ごとに個別最適になっている業務を変えるべき理由がある。

見積取得のDX化が求められている理由

まずはベテランの引退だ。日本人の平均年齢は約50歳だ。訪問する企業では「今年で定年です」と教えてくれる方々に出会う。経験豊富な社員が不在になるなかで、そのノウハウが失われる。まさに調達機能の低下にほかならない。

次に製品ライフサイクルが異常なほどに短縮している点だ。DX化された世界では技術進化のスピードがすさまじい。みなさんはSNSのアカウントを有しているだろうか。私のSNSには毎日、毎時間のようにAIサービスの機能アップデートが流れてくる。製造業ではそれほどではなくても、実際に企画や設計にAIは活用されている。新商品の構想から上市までの期間が短くなるので、調達サイドからの迅速な見積回答が、自社の成約率を左右するだろう。

昨今はインフレ局面だ。取引先からの値上げ要請は日常茶飯事となっている。しかし、要請が妥当か判断できない。アナログな管理では、過去の類似品の価格推移や原材料価格との連動性を引き出せない。

さらに現代は地政学の時代だ。為替や戦争や紛争など、原材料等の変動を自社コストにすばやく反映する。そして全社のサプライチェーンリスクを見極めたうえで、次なる一手の構築が求められる。

また企業によっては、欧州を中心とした環境規制への対応も急務だろう。見積書の取得段階でカーボンフットプリントのデータを回収することが一般化するだろう。Excel管理の限界を超え、DX化なしではグローバル市場に参入できない。とくにScope3の算定では、購入した製品ごとの排出量データを取引先から個別に取得する必要がある。見積書と排出原単位をひも付けて管理できなければ、算定の精度は担保できない。

私は脅す気はない。ただ時代とともに仕事の手法とシステムを変える必然はあるだろう。

見積業務システム化のポイント

ではシステム化成功のカギはなんだろうか。まずは外部の人間に「あんたねえ」と睨みを効かせないことだろう。そして、システム化を単純にペーパレス化と考えないことだ。業務プロセスの再設計を伴う。

個人のメールボックスにたまる見積依頼や見積書、価格交渉履歴をプラットフォームに集約し、共有可能なデータベースへと意識を変えるべきだ。最終的に決まった取引先だけではなく、相見積書も保存しよう。取引先ごとの傾向も調査可能になる。なお、そもそも社の看板を背負って業務をしているから、担当者だけがデータを抱えておくのはそもそもおかしい。

その際には、見積回答の総額だけを記録させないことだ。材料費、加工費、管理費といった内訳をデータとして構造化して保持することが望まれる。これによって、過去の履歴単価を可視化することで、新規見積が妥当な範囲内にあるかを判別できる。

たとえば材料費であれば、材料単価、使用重量という要素に分解して記録する(材料スクラップがあればそれも記録)。加工費も工程ごとに設備賃率、加工時間で記録すれば、どの工程でコストがかかっているか比較できる。なおシステム化しても、どうしてもメールで見積書を送付してくる取引先もいるだろう。ただ、近年はAIOCRの精度が実用レベルに達しており、取引先から届くPDFも問題なく読み取れるはずだ。短時間で、かつ入力ミスの問題も同時に解消されている。

また、過去との比較をより実効的にするために、見積書を作成する根拠となる図面をデータ化して持つとよい。材質や寸法、公差などだ。のちほど過去履歴と突合して単価をチェックできるようになる。これら図面パラメータの蓄積が進めば、新規案件の依頼時に類似品を自動検索し、早期の仕様修正やコスト削減に寄与できる。開発購買を進めるうえでも重要だ。

経営コンサルタント 坂口孝則氏

さらに欠かせないのは、UX(ユーザー操作性)だろう。というのも「ホント、うちのシステムが使いにくくて……。いやになっちゃう」と愚痴を何度も聞かされた。そのシステムに慣れることは、一歩社外に出ると何の価値もないのに、熟練した社員が重宝される……など倒錯したケースも多々ある。

システム選定時には、調達現場が求める柔軟な見積比較や図面ひも付けの機能が強いか確認しよう。また、基幹システムとのデータ連携ができるか。現場をあまりに過度に重視する必要はない。ただ誰がやっても「使いにくい」と嘆くシステムは悲惨だから、実際に使う担当者の声を要件定義に反映させよう。導入後、影でExcelに逆戻りしてしまわないように。

見積業務システムで重要な連携

さらに見積書の情報がシステムとして分断されている場合がある。つまり、次の基幹システム等へ手入力しているケースだ。これは二重入力で非効率的だし、ヒューマンエラーも起きうる。現在、さすがに発注書の印刷や郵送は、ほとんどないだろうが、取引先へ電子データを正確・迅速に伝えることでサプライチェーン全体の同期が進む。

もちろんインボイス制度や電子帳簿保存法への対応にもなるし、取引・交渉データを残すことは取適法遵守の点からいっても望ましい。

見積業務のシステム化

ここで私が強調したいのは、調達の業務システムを活用することで非定型業務の効率化を図らねばならない点だ。そこで見積書・EDI基盤のうえに、サプライヤポータル(取引先とのコミュニケーションツール)を構築するのがよい。これによって従来はメール等で個別に実施していたやりとりを一元化できるし、記録化できるので後日に確認しても一目瞭然だ。

CLM(契約ライフサイクルマネジメント:Contract Lifecycle Management)という単語が出てきた。これは契約書の保管、更新等を一元的に管理するものだ。契約書を探すときに、調達部室の奥にいってキャビネットを探していたのは昔だ。新規契約、機密保持契約書の管理や更新をシステム上で完了させる。もちろんこれは印紙代の節約にもなる。

たとえばCLMでは、契約の有効期限が近づくと担当者へ自動でアラートが飛ぶものがある。更新がモレてしまって無契約状態での取引はおそるべき調達リスクそのものだ。さらに契約条項をデータベース化しておけば、「価格改定条項がある契約はどれか」「瑕疵担保の期間が短い契約はどれか」といった横断検索が瞬時にできる。また紛争や災害時、海外との取引の際には、不可抗力条項などを検索すれば、供給が停止しうる取引先を予期できる。個別の契約書を一件ずつ開いて確認する作業から解放される意味は大きい。

またこのところ面倒なのが、法規制や紛争勃発、また環境対応などによって取引先アンケートが増加している点だ。ESG、カーボンフットプリントからはじまって、調達停止懸念品アンケートや、BCP調査、人権状況確認など、たった1年で取引先に何度の確認を実施しただろうか。これら広範囲のアンケートは、サプライヤポータルから一斉配信し、回答を自動回収、グラフ化などによって、調達人材の工数を大幅に削減できる。

これまで何度もアンケートを受け取っている取引先も大変だったはずだ。取引先側にもメリットを提示する必要がある。メールや電話での追い込みを止め、システム上で進捗が可視化されることで、取引先側の営業工数も削減される。自社だけでなく、サプライチェーン全体の「事務作業という莫大なコスト」を削ぎ落とすという視点だ。調達部門は、たんなる買い手ではなく、DX化によってサプライヤーと共創する側へと意識改革が求められる。

単なるDX化を超えて

そこで話は冒頭に戻る。
私の経験から、調達戦略の構築やら、サプライチェーンのリスク管理強化などを私がもちかけても、対応しきれない調達部門の姿を描いた。まさに目的あってこそのDX化だ。定型作業から解放された調達人材は、その後、付加価値をつける業務にシフトせねばならない。

インフレの時代だ。調達人材は仕様変更やVAとかVEを積極的に提案していこう。またこれまで見えていなかったディープティア(ティア1以降の取引先)を確認することで危険度を把握、対策を講じよう。また、サプライヤーとの関係を築くのは、けっきょく人間しかできない。より創造的かつ人間臭い業務へシフトすることが、ひいては企業の競争力を高めていく。

システム化、DX化は、あくまで手段だ。効率化によって生まれた空白の時間にこそ、人が「想像」し、新たな価値を「創造」する真の調達の姿が宿る。

単なるDX化を超えて

製造業の直接材調達における見積業務は、案件増加や要求条件の高度化により、属人化や個別最適の限界を迎えています。Excelやメールを中心とした運用では、見積依頼から回収・比較に多くの工数がかかるうえ、見積結果がその後の発注・EDI・契約管理へ十分に連携されておらず、二重入力や転記ミスが発生しています。

見積業務のシステム化で重要なのは、単なる作業効率化ではなく、見積から受発注(EDI)、契約書・誓約書、各種アンケート管理までを一気通貫でつなぐことです。業務プロセス全体を整理することで、調達担当者は転記や確認作業から解放され、本来注力すべき判断や交渉に時間を使えるようになります。

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