国税庁OBの袖山税理士が解説「インボイス・電帳法におけるEDIデータ保存に関するQ&A」(2023/11/13更新)
筆者:袖山喜久造(そでやまきくぞう) SKJ総合税理士事務所 所長・税理士
国税庁調査課、東京国税局調査部において長年大規模法人の法人税調査等に従事。在職中、電子帳簿保存法担当の情報技術専門官として、調査、納税者指導、職員教育等に携わる。平成24年7月に国税を退職し、同年11月SKJ総合税理士事務所を開設。税務コンサルティングのほか企業電子化、システムコンサルティングを行う。
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「国税庁OB袖山税理士が語るインボイス・電帳法におけるEDIデータ保存の必要性」と題して、袖山税理士がEDIデータの保存と準備すべき事項について説明するウェビナーを開催しております。
本稿では、皆様からの質問に対して袖山税理士が回答しましたQ&Aの一部をご紹介します。
※セミナー参加者からの質問内容は、一部編集して掲載させていただいております。
※SCSK株式会社として内容を担保するものではございません。
※法的なお問い合わせは、お客様の顧問税理士などにご相談ください。
- 【1】EDIデータの保存形式は、EDIフォーマットそのままで良いですか。
- 【2】固定長マルチレイアウト(全銀フォーマット)で送信しているデータはどのように対応すれば良いですか。
- 【3】EDIフォーマットから自社フォーマットに変換して基幹システムに取り込む場合、保存すべきデータはEDIフォーマットと自社フォーマットのどちらですか。
- 【4】業界標準ではなくオリジナルデータフォーマットによるEDIデータ授受の場合の保存方法について教えてください。
- 【5】Web-EDIで発注や請求データをCSV保存できない場合、画面のスクリーンショットなどで保存する必要はありますか。
- 【6】EDIサービス事業者など外部企業にEDIデータの保存を代行してもらうことは可能ですか。
- 【7】EDIデータの保存は、訂正や取り消しも必要になりますか。
- 【8】注文書を発行するEDI側で電帳法の要件を満たしていれば、自社の対応は不要ですか。
- 【9】電子取引データの保存対象は、相手から受領する書類のみで良いか、自己が作成する書類も対象となるか教えてください。
- 【10】流通BMSなどで取得した各種メッセージデータの保存方法について教えてください。
- 【11】EDIデータを検索する際のマスタ情報について教えてください。
- 【12】電帳法の保存期間は7年と10年でどのような違いがありますか。
- 【13】委託先から送ってもらったCSVデータをサーバー内の専用フォルダで保管しておりますが、CSVファイルの保存はどのようにすれば良いですか。
- 【14】EDI取引の請求書の控えをPDFでダウンロードできるように対応していますが、画面上で閲覧できるようにする必要はありますか。
- 【15】電帳法猶予規程を採用する際のリスク、猶予規程を採用する場合でも最低限対応が必要となる内容について教えてください。
- 【16】納品書をインボイスとした場合の保存方法と検索について教えてください。
原則として、授受されたEDIデータを、メッセージ、データ項目等の取引情報について見読性を確保した状態で保存します。使用しない項目等は保存しなくても問題はありませんが、マスター等を参照しなければ内容の判読ができない場合にはマスター情報を含めて保存する必要があります。
全銀EDIデータの使用は公開していますので、ダウンロードデータをテキスト上で保存することで問題ありません。
EDIデータを保存する場合、授受されたデータを保存する必要があります。自社フォーマットとは、自社システムに取り込んだ後のデータとなり、授受されているデータとならないケースが多くありますので確認が必要です。
EDIデータは、原則として授受されているEDIデータを可変長でデータ項目がわかるように保存します。マスターを参照する必要があるデータ項目については、記載内容が分かるようにマスターデータを保存し参照するか、マスター情報をマージしてテキストのデータベースとして保存する必要がります。
Web-EDIなど取引情報がダウンロードできないような場合にはスクリーンショットによる保存を検討することも必要です。
EDIデータを授受したシステム以外で保存することは問題ありません。ただしデータ移管方法については、訂正削除することのないようなデータ連携の仕組み又は運用ルールの整備などを行ってください。
EDI取引において、取引途上で訂正削除されたデータは保存しなくても問題ありません。最終確定情報のみを保存することしている場合にはそれも認められます。(ただし見積情報は除かれます)
取引の過程において、どのプロセスに係る取引情報の授受をEDIで授受しているかによります。授受されているメッセージのデータについては全て保存が必要となります。
電子取引は送信側、受信側双方でデータ保存が必要となります。
各EDI取引に係るデータは、テキスト形式など見読可能な状態でデータベースとして保存する必要があります。自社で保存する方法やクラウドで保存する、若しくは保存を委託する方法があります。自社で保存する場合には、電帳法施行規則4条1項で規定される措置要件(タイムスタンプ付与、他社クラウドサービス、事務処理規程のいずれか)や検索要件に対応することが必要となります。
データが授受された時点のマスター情報の参照が必要です。特に商品コードなど上書きしてマスター運用するような場合には注意が必要です。
法人税法では原則7年保存となります。青色申告、連結納税の承認を受けている会社で繰越欠損金が生じた事業年度に係る帳簿書類等は10年保存となります。
EDI取引に係るデータは、各メッセージごとにデータ項目の保存を行うことが原則となりますが、保存に当たりマスター等で参照することとなるデータを保存する必要があります。
CSVによる取引データと共に金額情報が参照できるマスターデータを保存するか、金額情報をマージしてデータ保存するかどちらかの対応が必要となります。
なお、電子取引データの保存に当たっての、真実性の確保要件(措置要件)では、タイムスタンプを付与する方法又は事務処理規程による対応も可能となります。
EDI上で授受されているデータ項目を全てPDFで表示ができる場合には、EDIデータはPDFデータで保存することも可能ですが、検索要件の対応が必要ですので、取引年月日、取引金額、取引先でどのように検索できるようにするかは検討が必要となります。
電子取引データの保存に関し、相当な理由により電帳法対応ができない場合は出力書面、当該電子取引データの双方を調査官の提示や提出の求めに応じられるように整理所存する必要があります。当該電子取引データは電帳法の保存要件に従って保存する必要はありませんが、書面とデータの両方を保存することになり、保存の手間が増えることになります。
納品書のみで適格請求書に対応させる場合、消費税法で規定されている適格請求書の記載事項もすべて網羅させる必要があります。納品書に記載されている取引明細は、本来帳簿に記載する必要がある取引情報で、これらの情報が記載される書類を帳簿代用書類としています。
納品書をデータで保存する場合、明細取引まで検索できるようにしておく必要はありません。納品年月日、納品金額合計(記載があれば)、取引先名称による検索が必要です。