【インタビュー】オール日本スーパーマーケット協会 総務部長 中村 伸一郎

オール日本スーパーマーケット協会
総務部長
中村 伸一郎

=まず、最新の流通BMSの導入状況を教えていただけますか。=

中村

流通BMS協議会が2011年9月から10月にかけてアンケートした調査によると、小売134社のうち31%が「導入済」または「導入予定」と答えています。「導入したい(時期未定)」まで含めると73%です。具体的に「導入済」「導入予定」と社名を公開しているスーパーの数は、2012年2月現在で86社。北海道から沖縄まで全国におよんでいます。

上記アンケートによると、小売が流通BMSを導入する理由として「伝票レス」「発注から納品時間の短縮」「通信コストの削減」といった即効性の高い効果を期待する傾向が見られました。一方で「導入するつもりはない」「時期未定」と答えた企業からは「投資対効果が見えない」「取引先から要請がない」といった声が大きいようです。

以上のような状況は2011年までですが、2012年は流通BMSを導入する企業の数が一気に増えることが予測されています。
というのも、2011年5月に経産省の支援のもとで「製・配・販連携協議会」が設立され、その中で流通BMS導入推進について議論が行われたことがきっかけです。
流通BMS導入推進ワーキンググループは「流通BMS導入宣言書」を発表し、宣言書に賛同する企業50社が導入・拡大計画することを明らかにしました。
例えば、大手のイオンリテール様では2012年12月末を目処に、2200社の取引先をすべて流通BMSに切り替える計画を立てています。
その他、イトーヨーカドーやユニー様など、大手GMS各社が積極的に導入・移行姿勢を示していることから、今後は間違いなく普及が加速していくでしょう。
流通システム開発センターの実態調査結果では、既に4000社程度の取引先が流通BMS対応済みで、今年は急激にその数が増加するはずです。

 

=スーパーマーケット業界では、流通BMSの普及に向けてどのような取り組みをしていますか。=

 

2011年から、オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会、日本ボランタリー協会の4団体が共同で流通BMSの普及に向けた説明会を開催しています。
2011年10月には日本スーパーマーケット協会様が10年後のスーパーマーケットのあり方をまとめた「シナリオ2020」を発表されました。
その中で日本スーパーマーケット協会 専務理事の大塚明氏は「少子高齢化で消費が頭うちとなりつつある今の時代、ITインフラはスーパーマーケット業界で共有し、本業の商品力や売り場作りで競争していく時代になった」とおっしゃっています。
各団体が協力するのも、このような著しい環境の変化の中で、業態を超えた競争に対峙することを考えなければいけないとの思いがあるからです。

 

=流通BMSを導入することで、確実に成果が出ると思っていいのでしょうか。=

 

「流通BMSを導入すればすべてが解決する」という考えは誤解です。
既存のEDIシステムでも、伝票レスなどである程度の効果は得られます。

流通BMSを導入するメリットは2つあります。
1つはスタンダードであること。企業の規模や形態に関係なく、すべての小売が共通の言語で意思疎通ができるメリットは計り知れません。
もう1つは、先人の知恵が詰まった仕組みであるということです。流通BMSは2006年以降、多くの業界が参加して標準化を行い、共同実証を積み重ねてきました。
つまり、先人たちがチェーンストアを拡大する過程で考案したノウハウが流通BMSにはすべて盛り込まれている。
これから業務の拡大を目指そうとするスーパーマーケットにとって、これほど安心して利用できるシステムはありません。
また、一気にこの流れが加速すれば、業界全体の取引のスピードアップと計り知れない効率化が図られ、結果として生活者の皆様にも貢献できることになります。
既存のEDIを否定するものではありませんが、取引先も取引手順が一つになれば投資も少なく済みます。
将来は、流通BMS以外は取引が制約されるかもしれません。このような業界全体の動きを意識していただき、ガラパゴスでいくのか、スタンダードでいくのかを判断いただく重要なターニングポイントが今だと思うのです。流通BMSの問題として、中小の取引先が導入投資できないとか、元来伝票レスを追及しているため、手書き伝票計上ができないなど現実的な問題もありますが、並行して問題解決と支援することが重要と協議会でも認識しています。

 

=最後に、スーパーマーケット業界が「スマクラ」を採用した理由を教えてください。=

 

あらゆるスーパーマーケットが、すぐに利用できるサービスだからです。
私たちが「流通BMSを導入してください」と声高に叫んでみても、実際に利用できるサービスを提供しなければ、一歩を踏み出すことができないスーパーマーケットは多数あります。
震災でも改めて痛感したこととして、取引のインフラを自前で持つより、信頼できるASPサービスを活用すること、いつでも、直ぐに、様々な取引先と接続して調達できることがBCPの観点からもいかに重要であるかという事です。また、大きな投資が今できる企業は多くはありません。
そのために、「このサービスを使えば簡単に流通BMSが導入できますよ」と提案するためのツールとして、中小のスーパーでもすぐに利用できて、コスト負担の低いスマクラを選び推奨しています。