株式会社アマノ様

「スーパーマーケット・トレードショー2016」パネルディスカッション講演内容
「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」 の中で、「流通BMS~せまる発注不全のリスクと流通BMS導入のメリット~」 と題したパネルディスカッションが行われ、 地方を代表してスーパーセンター業態の株式会社アマノ様がパネリストとして参加されました。
流通BMS導入とそれによる業務改善について、専務取締役 天野良喜氏のご講演内容をご紹介いたします。
秋田県下に、店舗面積3,000坪を超えるスーパーセンター3店舗を構える株式会社アマノ様。
「 ワンフロア・オールインワン・ディスカウントショッピング 」 がコンセプトで、広大なフロアに15万SKUの商品が品揃えされ、生鮮食品を含めて日常生活に必要なもの全てが、ワンストップで揃います。
お年寄りに優しい店作りにも取り組み、地域一番店であり、地域のコミュニティとしても機能しています。

株式会社アマノ概要

アマノは、町の金物店からスタートし、昭和60年に、店舗面積約150坪の「ホームプラザアマノ」に転換。 合わせて、株式会社アマノを設立しました。その後、150坪では品揃えに限界があるということで、店舗を300坪に拡大。
さらに平成10年に、スーパーセンターに業態変えしました。

店舗のご紹介

スーパーセンターの出店は、平成10年の「井川店」が最初です。
「きっかけは、コンサルタントの先生とでかけたアメリカの流通業界の視察旅行でした。ウォルマートをみて、これからは、生鮮、一般食品から、衣料品、家具、雑貨など、日常生活に必要なあらゆる商品を取り入れたホームセンターの時代だと直感したのです。  しかしながら、井川店を計画し、銀行に融資を申し込んだところ、絶対失敗すると断られたといったこともありました。  当時としては、田んぼのど真ん中に3000坪の店ですから、無理もありませんが、自信があったので、押し切りました。  平成10年に井川店をオープン。その後、平成12年に男鹿店、平成20年に五所川原店を出店し、現在、秋田県西部に3店舗をドミナント出店しています。

スーパーセンターアマノとは

店舗はいずれも、ワンフロア3000坪超で、生活に必要なあらゆるカテゴリーを持ちこんでおり、部門は35部門に及びます。
商品は、地域のお客様のニーズ、ウオンツに沿うベーシックなアイテムに絞りこみ、多品種・多品目の圧倒的な品揃えと、明確な安さを打ち出しています。
ワンストップで、日常生活に必要な買物ができる、オールインワンのディズカウントショップがスーパーセンターアマノです。従来にはないフルラインストアと自負しています。

フロアガイド(スーパーセンターアマノ男鹿店 3500坪)

このフロア図は、店舗面積3500坪の男鹿店です。
生活に必要な、ありとあらゆる商品が揃うことが、お分かりいただけると思います。
商圏内人口は3~5万人程度ですが、ワンストップショッピングができるので、遠方からの来店客も少なくありません。

アマノの5大特徴

様々な形のスーパーセンターが存在すると思いますが、当社は、スーパーセンターの基本路線をブレずに走っています。
商品はフルラインで揃えていますが、何でもあるではなく、生活に必要なものが揃うという考え方です。
そして、専門性が高いものや高級品ではなく、ベーシックに徹し、同じ分野のものを何種類も揃えて、選択肢を広げているのもアマノ様の特長です。また、無駄な経費を抑えて、お客様により安く提供するのも当社の基本です。

特色:お年寄りにやさしい店作り

全店、バリアフリーで、通路幅を広く取るなど、高齢者、障害のある方、お子様連れのお客様がゆっくり買い物できるよう配慮しています。
店内が広いため、買物中に一休みできるベンチを置いた休憩スペースも、随所に用意されています。
特色としては、商圏内の高齢化率が高いため、井川店と男鹿店に高齢者サロン「ふれあい茶の間」を設けました。
60歳以上で会員になった方が自由に利用でき、無料でお茶やコーヒーも飲めるスペースで、会員の高齢者は、買物後、通常のレジを通らず、そのままサロンに直行。ゆっくりくつろいでいる間に、専用のレジで精算も済ませられます。
これは、「地域のコミュニティの場」として作りました。現在、会員数は500名ほどで、頻繁に来店される方も多く、ここでお友達になった方もいらっしゃいます。個々がお年寄りの憩いの場になればとの思いをもって、お年寄りにやさしい店作りに取り組んでいます。
こちらの取り組みは、秋田県バリアフリー推進賞を受賞いたしました。

小売業は、大変・・・

小売店では、様々な取引先があり、受発注の方法も多彩です。
従来型のEOS、FAX、電話による受発注では、大量の伝票が必要で、その処理や入力作業に多大な時間と人手を取られていました。
当社も例外ではありませんでした。15万SKUという圧倒的品揃えの同社では、取引先の口座は約500社。受発注は、発注データを配信するだけで、ターンアラウンド伝票で運用するEOS、FAX、電話の他、時には営業担当の口頭での発注もあり、伝票は煩雑を極めていました。
さらに、問屋側の欠品で発注数と納品数に差異があったり、納品伝票の記載間違いがあったりで、修正したものを手打ちしなければならないことも多々ありました。
伝票入力業務は、各店舗で、事務専任スタッフ2~3人が行っていましたが、毎日、伝票が机の上に山積みで、1日中、入力作業に追われている状態でした。これを何とかしたいというのが、EDI化のスタートでした。

EDI化すると 小売も、卸・メーカー様もペーパーレス実現!

EDI化後のイメージが、この図です。アマノからの発注は、電子化された発注データで卸・メーカーに届き、卸・メーカーからは、電子化された出荷データが送られてくるので、コンピュータで自動処理でき、ペーパーレスが実現します。入力作業は修正だけなので、作業量は格段に減少し、ミスも減ります。
当社は、EDI化開始から間もないので、まだ検証段階ですが、データの送受信が非常にスピーディですし、データでやり取りできるので、店舗での入力作業は、現段階で、すでに大幅に減りました。専任スタッフの手が空く時間帯もでき、他の業務を手伝う余裕もあります。以前は考えられないことです。
また、納品前に問屋の欠品情報が分かり、納品時の欠品率も明確になったことで、欠品率などの数字をもとに、問屋と交渉ができ、以前より、欠品が減りました。欠品は売上に直結するので大きな成果です。

アマノのEDI導入検討背景

EDI化を考えた背景には、発注から受領、返品に至るまでの全てをデータ化し、伝票レス、請求書レスを実現したいという思いに加え、もう一つ大きな問題がありました。
EOSでの受発注に使用していたVAN会社に発注データを流しても、そこで止まってしまい、問屋に届かないことが、頻繁にあったのです。システムトラブルが主原因だったようですが、私どもは、問屋からの問い合わせで、データが届いていないことを知る状態でした。取引先に多大なご迷惑をおかけしており、大きな不安を抱えていました。
さらに、大手問屋からの要請もあった。実は、4~5年前から取引先の大手の問屋より、EDI化の話しが出ており、EDI化を図って実績を上げる量販店やスーパーマーケットなどが増えるにつれ、接続方法がJCA、FAXだけでなく、流通BMS、WEB-EDIなども選択できるようにして欲しいという声が強まっていました。

環境要因:JCA手順を持ち続けるリスクを考えざるを得ない時代に突入

EDI化の必要性は分かっていたのですが、そのためには基幹システムをバージョンアップしなければならず、投資も必要です。なかなか踏み切れずにいました。このような状況のアマノの背中を押したのは、環境要因でした。
うちは田舎なので情報が遅い面もあります。JCA手順の先行きをあまり考えることが無かったのですが、電話回線が廃止になる2020年問題を耳にして、様々な課題が一気に見えてきたのです。
2020年問題は、当社のシステム担当は把握していたのですが、私のところまで届いておらず、外部からも耳に入らなかったので、迂闊にも昨年の半ばまで知りませんでした。しかし、これを機に、電話回線の問題だけでなく、周辺機器の生産や保守の中止、複数税率へ対応しないなどのJCAの問題が浮き彫りになり、JCA手順を使い続けるリスクを痛感しました。そして、EDI化に先立って、クレジットの端末を、電話回線からISDN光回線に変えたところ、それまで30秒掛っていたクレジットカードの決済が、わずか数秒に短縮し、新たな時代を実感しました。

環境要因:流通BMSが今後のEDIのスタンダードへ

こちらは、JCA手順と流通BMSの主な比較表になります。
赤くした部分が、今回のEDI導入のポイントです。

流通BMS導入前のEOS・FAX取引

これがかつての、アマノ様の取引の流れです。
JCA手順、FAXでのやりとりが、業務を煩雑にし、様々なトラブルを生んでいました。

流通BMS導入後のEDI取引

流通BMS導入後の、取引の流れです。
規模や取引量の問題で、FAXでの取引は残りますが、大半が、データでのやりとりにシフトし、ペーパーレス化と業務の効率化、受発注の精度向上が図れます。

導入・切替スケジュール

EDI化を進める必要性を痛感したのと時を同じくして、基幹システムの保守期間の終了が迫りました。基幹システムをお願いしている企業からは、保守期間が切れる時期にEDI化を検討したらどうかという提案を受けており、様々なタイミングが重なって、昨年、EDI化を進めることを決意しました。まず、EOSでの受発注を行っていた企業から切り替えを始めましたが、一気にEDI化したかったものの、難しい事情がありました。VAN会社とEOS契約をしていた企業は、契約が5年縛りで、途中で解約すると違約金が発生するため、無理にお願いできなかったのです。
それで、契約が切れるタイミングでの切り替えを依頼し、昨年の3月4月で契約が満期を迎えた企業から、順次、切り替えの申し込みを受け付けました。早いところは9月からテストを実施して、10月から運用にこぎつけ、EOSからの切り替えは、2016年1月段階で、26社まで進みました。

プロジェクト体制

切り替えに際して、手間もコストも思った以上に掛りませんでした。
人的には、私が統括・業務責任者を勤め、他にシステム担当者と契約担当者の3名体制で臨み、システム会社のSCSKからは3名のスタッフがサポート。これに基幹システムの会社の担当者を加えた陣容で、スムースに切り替えが進んでいます。
コスト面についても「スマクラを導入したことで、初期費用は、自社でシステムを構築する場合の数十分の1程度で済み、うちの規模でも大きな負担ではありません。

EDI切替実績

問題は、FAXで取引していた企業でした。同社の取引先の大半は中小規模の企業で、FAXでの受発注が約300社あり、ここをEDI化しないと伝票枚数を削減できませんが、切り替えは簡単ではありません。
まず、伝票枚数の多い企業や、やや規模の大きい企業など、約100社を抽出。昨年8月に、EDIの契約、運用に関する説明会を実施し、協力を依頼しました。
EDIをご存じない方もいらしたと思いますが、SCSKさんに分かりやすく説明していただきました。その結果、約3割の企業様が切り替えを快諾して下さいました。
年明けから一斉に切り替えを開始し、2月末までに30数社のEDI化を完了しました。現在、EOSからとFAXからとを合わせて、EDI切り変え企業は計62社になり、全取引量の2割に達しています。

EDI切変予定

今後、VAN会社を通していた企業については、契約満了のタイミングで、切り替えを進めていく予定です。一方、FAX専用のところは、「取引が週に1~2回、あるいは季節限定やスポットというところもあり、200社以上は、今後もFAXでの受発注はやむを得ないと思っています。
そして目下の大きな課題は、生鮮です。伝票枚数が多いのに、手を付けていない部分で、ここを、早い時期にEDI化できればと思っています。
タイムスケジュールとしては、2018年10月までに、少なくとも150社の切り替えを済ませ、180社になった段階でJCA手順を廃止する計画です。

その他、導入効果

こちらは、当社とお取引先それぞれの、流通BMSの導入効果をまとめた表です。
計画通り進めば、2018年には、180社、商品の8割5分がEDIでの受発注になり、この表のような導入効果が明確に現れるでしょう。
その際は、伝票入力業務を本部に一元化し、店舗の負担を減らすことも考えています。