株式会社与野フードセンター様 第4回

事例でわかる流通BMS導入プロジェクトの詳しい進め方
「流通BMSは導入したいが、プロジェクトの進め方がわからないので不安」という声が多くのスーパーマーケットから寄せられています。確かに不安は多いと思いますが、実際は想像以上に難しくありません。そこで今回は、スマクラを採用して流通BMSの導入を進めている株式会社与野フードセンター様の事例を通して、具体的な手順を解説していきます。

株式会社与野フードセンター

与野フードセンターは1960年に埼玉県与野市(現さいたま市)で創業した食品スーパーマーケットです。「よい物を安価に」をモットーに、地域密着で18店舗を展開しています。


連載第4回
店舗運営部長:橋口一成様
第1回目で「キックオフ」、第2回目では「要件定義」、3回目は「取引先説明会」について解説してきました。
第4回目は「導入編」の前編として、取引先説明会で明示した導入スケジュールを、どのように実践し導入に至ったか、実際に現場で先頭に立ち陣頭指揮を取られた店舗運営部長・橋口一成様に伺いました。
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導入期間として実質どれくらいかかりましたか。

社内で導入の話が持ち上がったのが、2012年の4月、センターシステムと運用の検討結果を受けて、9月末かから実際の導入作業に入り、よく2013年4月にスタートしました。このようなプロジェクトではつきものの想定外の課題も発生しましが、それを含めても結果的に当初立てた新生鮮センター稼動に合わせてリリースするというスケジュール通りに導入することができました。
(サービスメニューとしては、当初Web-EDIと流通BMSで若干ずらしての導入スケジュールとしていましたが、最終的には、センター稼動と同時に両方稼動させる形に修正しています。)
弊社側は、私のほか計3名のみで、これだけの作業量をこなすことは到底無理であり、その中でスクジュールを守れたということは、お取引先様各社のご理解とご協力を頂けたこと、そして通信・システムベンダー各社の協力と各種サポートの形で真摯に応えていただいた結果だと思います。


新システムの移行に伴って、どのようなことをされましたか。

まず、はじめに、流通BMSに関して社内勉強会を開催し、自社にどう寄与するのかについて関係者の情報共有を図った上で、お取引先様への対応を図るようにしました。
新生鮮センターへの流通BMSには、不安を持たれるお取引先様も多いのではないかと思い、実態調査としてこれに先立ち、お取引先様17社へアンケートを実施しました。この結果、意外にも否定的な声が少なかったため、そのままお取引先様説明会開催の準備を進めることにしました。お取引先様説明会は、導入3ヶ月前の1月に実施しました。

もちろん、不安を抱くお取引先様はありましたので、そのようなお取引先様に対してはお取引先説明会開催前後に個別にお伺いしてご理解とご協力を得られるようにお願いしました。その上で、お取引先様説明を開催しています。

次に契約書です。お取引先様との間には既に、売買基本契約書を取り交わしていますので、その別紙として、スマクラの利用契約書を締結するようにしました。具体的には、お取引先様説明会実施時の配布資料に、スマクラ利用の申込書と料金表を添付し、申込書にて利用の意思表示をして頂いたお取引先様個々へ利用契約書をお渡して、契約書を取り交わすという手順を取りました。

新システム移行に伴って、どのような点について気を使われましたか。

EDIの切替だけでなく、自社の基幹システムとスマクラ(流通)BMSとのシステム連携に対する投資コストがどれ位かかるのか、かけるコストに対して効果はどのようなもの想定されるのか、限られたリソースの中で短期導入を実現するにはどうすべきか、そして、それに見合ったセンターシステムの構築をどうするのか、といった点について腐心しました。

導入前の接続テストはどのように行いましたか。

スマクラ(データセンター)とお取引先様の間のテストについては、基幹システムへの影響が懸念されたため、本番データをテストに使用することはしませんでした。
そのため、本部の負荷が大きいのですが、代替手段として、様々なパターンを想定し、これに対応するダミーデータを本部で作成し、これをもってテストに臨むこととしました。本番直前になって想定外の事態が発生し、この対応に追われる一幕もありましたが、このような事態においても、各ベンダーの協力・各社の連携によって乗り切ることができ、スタートにまでこぎつけることができました。
なお、実際に想定外の事態が発生した場合には、対応策として仕様の一部見直しも発生しました。仕様の見直しはタイムラグなしに関係者が必ず情報共有をしなければなりませんが、これを行うためには本部に大きな負荷がかかります。
そこで、テストに関わる資料についてはスマクラポータルを利用して、資料の配布を郵送ではなく、Web画面からのダウンロード形式にして本部業務の負荷軽減を行いました。

新生鮮センターとの接続テストはどのように行いましたか。

これまでは、データセンター経由のデータの他に、バイヤー発注のような本部・センター間、出荷開始型となる電話FAXのお取引先様・センター間でデータをやり取りするケースが存在していましたが、今回の試みとしてデータの流れを一元管理するために、全てスマクラ経由での流れに一本化しました。その結果、お取引先様や新生鮮センターとのテストについてもスマクラ側で行えることになり、結果として、作業を効率化することができました。

稼働前夜までに、どのようなことをされましたか。

新システム導入に際しては、万全を期していてもトラブルがつきものです。
お取引先様からの問合せ、社内の担当者からの問合せに対して想定できるものに関しては地道に社内ミーティングを開催して洗い出しを図り、事前にQAマニュアルとして取りまとめ、関係各位に配布しました。
先のお取引先様向け説明会開催時に、「よく解らなかった」というお取引先様が出てきた場合を想定して、個別問合せへの対応体制も整えて対応しました。不安に感じられているお取引先様には個別にご説明を行い、ご理解とご協力をお願いしました。
特に多かったのは、システム周りの問い合わせで、これはスマクラの専用窓口にて、サポートをしてもらいました。その内容についても、情報共有を図りました。

今回は生鮮部門を先行させての稼働ですが、どのようなことが変わりましたか。

新生鮮センターで扱う対象は主に鮮魚です。
鮮魚は日によって価格の変動があるなどEDI化が難しい部門ですが、新センター稼働が決定されていたこともあり、この新センター設立に合せて流通BMS導入に取り組みました。

まず、センター業務では、これまで弊社では採用していなかった、出荷案内ベースでのセンター検収に変更しました。
これまでは、発注データを使っていましたので、特に不定貫などは毎回入荷の度、発注データをお取引先様側で一旦取消して、手書き伝票に切り替えていましたので、折角のEOSデータが途中で途切れると言った非効率な運用をおこなっていました。
流通BMSの出荷メッセージ(事前出荷案内)を使用することで、検収の精度をあげること、手書き伝票を大幅に削減することなど、お取引先様、及びセンター側を含めた弊社共に運用面での効率化を図ることが出来ました。
その他、欠品やなどの把握もより精度の正しい情報を得ることができるようになってきました。

ズバリ、スケジュール通りに導入ができたポイントは何だったと思いますか。

一言で言うと、EDIではスマクラ(SCSK)をはじめとして、基幹システムや、生鮮センターのITベンダー各社がそれぞれ、サポートしてくれたことだと思います。

業務での対応には、様々な与件があります。
対応に迷った際には、スマクラが想定する業務を前提に出来るだけシンプルな形で合わせように腐心したことだと思います。
また、基幹システムの入れ替え検討とは分離したことも大きかったと思います。
ただし、後者においては、その弊害といいますか、不安要素、不確定要素を残すことになり、結果として、流通BMSで目指すべき、支払メッセージまでの連携に至らず、受領メッセージまでの導入に留まることになってしまいました。

具体的には、どのような取り組みとなったのでしょうか。

生鮮センターのオペレーションをシンプルにしたことは先に述べたとおりですが、流通BMS導入に際しては、お取引先様の協力が不可欠です。そのため、何よりも先にお取引先様に対して、運用・問題把握・業務の切り分けといった事柄それぞれに対し、これまで行っていた運用よりも効率的になるようにしましょう、という姿勢で取り組みました。

まず、世の中に流通業取引の標準と呼べるものは、流通BMSしか存在しないので、これをベースに検討しましょうという方針決定を行いました。流通BMS導入については、正直、お取引先様においても導入のハードルが高いことは承知した上で、各お取引先様にお願いしました。

流通BMSに対するご理解の状況は、お取引先様毎に様々でした。不安要件を抱えるお取引先様には、ひざ詰めしてご説明し、必要と判断した場合には、弊社側の運用でカバーするといった対策を取ることもありました。この対話の中から、業務の流れの形を作って行きました。

流通システム開発センターをはじめとして、流通BMS導入に至るあるべき論が語られた資料は数多くありますが、正直実感が湧かないものでした。実際に自ら導入・運用して初めて、その効果の実感が湧くようになり、効率化がなされたと体感出来るようになった次第です。

当初立てたスケジュール通りに導入出来た、その取り組みのポイントは、特別な運用を無くしたことです。
従来行っていた業務、システム化が出来なかった業務をすべて、これを機にシステム化に取り組むといったことも必要ですが、流通BMSとはそもそも大手小売業のノウハウそのものです。流通BMSで検討して、従来行っていた業務がシステム化に沿わないのであるなら、それは無理をしてシステム化すべき業務ではないと認識すべきとしました。言い換えると対象業務すべてを無理にシステム化することでかえって業務が増えてしまうような場合には思い切ってシステム化の対象外としてしまいました。

例えば、どのような業務を対象外としたのでしょうか。

例えば、今回、新生鮮センター立ち上げに際して、出荷メッセージ(出荷確定データ)をお取引先様から新生鮮センターへ送信するようにしましたが、一部の商品に関して所定の締時間までに間に合わないことが判明しました。

具体的には、地元が埼玉県であるので大半は大宮卸売市場から仕入れますが、品揃えの都合上どうしても一部は築地市場で仕入れることになります。この一部の仕入れで間に合わないものがあることが判明しました。事前に取り決めたお取引先様・新生鮮センター・小売りそれぞれで無理が無いとする運用ルールは、4:00までに出荷確定を行い、新生鮮センターへ5:00までに納品するというものですが、築地からの搬送時間を考慮すると4:00までに出荷確定を行うのは事実上無理です。

そこで実際にその件数は何件であるのかを調査しました。その結果、日に数十件程度しか発生しないことが判明しました。 

発生件数が極めて少ないことが判明したため、これについては新生鮮センター内の業務として対応(当日中にデータ化)することにしました。

もしこの調査を行わずに業務フロー上の変更で対応したとすると、出荷メッセージの締時間、新生鮮センターや店舗への納品時間の変更、およびそれぞれの業務対応時間の短縮といった、製・配・販のどこかに無理を強いるようなことになっていたと思われます。標準の業務と例外の業務を明確に区別することで、結果として無理のない運用、これまで行っていた運用よりも効率的な運用が実現されました。

その他に対象外とした業務はありますか。

先の関東を襲った大雪のように、想定外の事態を対象外として、BCP(事業継続計画)対策として別に検討しました。
天災など想定外の事態により、出荷データが届かないなどの通信系のトラブル、物流が止まって商品が届かないといった事態におけるバックアップ体制、連絡体制やフォーマット作成、ルール作りを行い、最悪の事態である物流が止まるという事態を避けるための施策を業務にまで落とし込みました。

基幹システムの入れ替え検討と分離したのはなぜでしょうか。

流通BMS導入のきっかけとして、基幹システムの入れ替えを機にという話もよく聞きますが、弊社では敢えて基幹システムには原則として、大きな改修せずに実施しました。

①大きな投資コストをかけずに、流通BMS導入に踏み切る、②出来るだけ現行店舗オペレーションに修正を加えずに導入する、という2大方針を元に、今回のプロジェクトは遂行されています。

弊社が、基幹システムの入れ替えと切り離した形でスマクラ(流通BMS)の導入に踏み切ったのは、最悪の事態を避けるためでした。大手であれば、豊富な人材を背景に大規模なシステム改変と業務オペレーションの変更を同時に行えるでしょう。しかし、弊社のように導入サポートを行える人材が限られている中で、基幹システムの変更に伴う店舗オペレーションの変更と同時に、品揃えに直結するEDIの変更を行うことは、店舗の混乱を招くだけでしかありません。また、流通BMSを一部導入することによって、その効果が肌身を以て実感していない状態で基幹システムを入れ替えるのは危険であるという思いもありました。実際、他社では、基幹システムの入れ替えに手間取り、これに引きずられる形で、流通BMSの稼働スケジュールが伸び伸びになってしまっているというお話も聞いていたため、なおさらでした。
基幹システムの入れ替えは、それだけ全社に与える影響が大きいものと認識しています。

今後の予定をお教えください。

他社では、導入が比較的易しいと考えられているグロサリーの一部から順番に導入、というお話もよく聞きます。与野フードセンターでは新生鮮センター立ち上げをもって流通BMS導入に臨みました。
流通BMS導入に際しては、生鮮、グロサリーともに、これに関わる業務フローはできるだけシンプルな形にして運用へと繋げたい、という思いがありました。
センターとの連携については、既存システムにセンターシステムが無かったために、スマクラに合わせる形で導入する、という選択が出来たことは幸いであったと思います。

今後の予定ですが、効果検証と同時並行でグロサリー等他部門への流通BMS導入については、導入に向けて現在各種テストを行っている真っ最中です。

9月には直納品を除くその他の部門において取引先説明会を実施し、2014年4月には本番稼働の予定で着々と進めています。

これら一連の取り組みは、大手小売業のノウハウの塊とされる流通BMSの業務フローとそこで利用されるビジネスメッセージを実践として現場で取り扱うようになることで、必然的に次期基幹システムのあるべき姿を浮き彫りにし、それを支える業務オペレーションを明確にするプロセスと考えています。言い換えれば、関係部署それぞれが流通BMSを実践することで、次期基幹システムの検討と業務改革の検討を全社の取り組みとして同時並行で進めていく、ということです。

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