流通4団体の合同による第2回「流通BMS普及推進説明会」を開催(名古屋)

日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、(一社)新日本スーパーマーケット協会、(一社)日本ボランタリーチェーン協会の流通4団体合同による第2回流通4団体合同「流通BMS普及推進説明会」が2012年2月29日、名古屋市のTKP名古屋駅前カンファレンスセンターで開催され、流通BMS普及促進事業の説明や、各企業での導入事例の紹介、経済産業省による特別講演などが行われた。

講演:『流通BMS普及促進事業について-なぜ今、流通BMSの導入を検討すべきなのか』
日本スーパーマーケット協会 事務局長 江口 法生

説明会の冒頭で、日本スーパーマーケット協会 事務局長の江口法生氏は、「10年後のスーパーマーケット」のあり方について言及した。今、スーパーマーケットを取り巻く環境が急速に変化している。「新たな通信情報技術を積極的に取り入れ、オペレーションの効率化とコストの削減」「業界標準を積極的に採用しサプライチェーンのコストを削減」といった課題が浮かび上がる中で、流通BMSが果たす役割について説明し、「流通BMSによる標準化を進めることが、業界の効率化に繋がる」と語った。

講演:『流通BMSの概要と普及状況-制定経緯、標準化の内容と効果、普及状況、今後の展望など』
財団法人 流通システム開発センター 研究開発部 部長 坂本 尚登 氏

続いて、流通システム開発センターの坂本部長が、流通BMSの概要と普及状況について講演を行なった。坂本氏は、流通BMS制定のねらいは老朽化した通信手順の置き換えや、業務プロセスとデータ書式の標準化にある説明。最新の調査では、流通BMS導入の卸・メーカーは3900社以上となり、普及の拡大が進んでいるとの結果が報告された。製・配・販連携協議会を通して、「サプライチェーン全体の最適化実現のため、流通BMSの導入を推進していきたい」と流通BMS推進の意欲を語った。

講演:『流通BMS導入メリットと将来の活用戦略-流通BMSの早期稼働メリットと次世代EDI活用による卸・メーカーとの協力体制の深化』
株式会社ヤオコー 営業企画部 システム管理担当部長 神藤 信弘 氏

流通BMSを導入した小売事業者の事例として講演を行なった株式会社ヤオコーのシステム管理担当部長 神藤信弘氏は、流通BMSの導入目的を「流通業界全体の効率化への貢献」「取引先負担軽減」「MD業務のサポートの布石」にあると説明。流通4団体が推奨するクラウド型の流通BMSサービス「スマクラ」を採用し、流通BMSを導入したことで、通信の一元化や通信時間の短縮、取引先負担の軽減が実現できたと語った。

講演:『【スマクラ】を活用した導入事例-流通BMS導入事例の紹介「サミット様」「セイミヤ様」』
日本スーパーマーケット協会 流通推進部 篠原 豊

続いて、日本スーパーマーケット協会の篠原豊氏が、サミット、セイミヤの2社における「スマクラ」の導入事例を紹介した。クラウド型EDIサービス「スマクラ」を採用し、伝票レスや通信時間の短縮、将来を見据えたインフラ基盤の構築を実現したサミット、セイミヤの事例を通して、篠原氏は「JCAは渋滞している道路のようなもの。スマクラを活用することで高速な通信が実現でき、次の活用にも繋がる」と語った。

講演:『創造・先取・挑戦-バローグループの流通BMSへの取組み』
中部薬品株式会社 管理本部 システム部 部長 古川 哲也 氏

中部地方を中心に、スーパーマーケットやドラッグストアなどをグループ全体で524店舗を展開しているバローグループのグループ企業である中部薬品株式会社の古川哲也氏は、バローグループにおける流通BMSの導入事例について講演した。

バローグループは、スーパーマーケット事業、ドラッグストア事業、ホームセンター事業、スポーツクラブ事業など様々な業態を展開しているが、「モノを仕入れて販売する、という商売の基本となるシステムは思いのほか共有できる部分が多い」と古川氏は言い、生鮮や調剤といった業態による特殊システムはサブシステムとして構築していると語る。こうした「システム資源及び情報の共有による有効活用」がバローグループのシステム開発方針となっているのが、システムの資源共有には標準化が大前提になると指摘する。

また、バローグループでは「EDIにおけるメーカー様、卸様のムダは小売への仕入原価に含まれている」という流通コストの考えがあり、その上で流通BMSへの取組みは「極めて自然な成り行きであった。流通BMS導入の検討会をすることもなく、当たり前のことのように捉えていた」と述べた。2009年の夏より導入の取り組みをスタートし、2010年2月にテスト導入を実施。5月に取引先説明会を行ない、7月より順次導入を展開しているという。

また古川氏は、ドラッグ業界における流通BMSへの取り組みについても説明を行なった。平成20年度に、ドラッグストア業界の小売と卸とメーカーの3業態が集まり、1年をかけて流通BMSの検討を行なった結果、「出荷荷姿」メッセージの新規作成、「照合基準日」の項目追加、「返品受領」メッセージの新規作成を加えることで、流通BMSがドラッグストアでの業務プロセスに適合できたという。「スーパー業界が作った標準化フォーマットをたった3つ修正するだけで、ドラッグストアでも十分に使えることが証明できた」と古川氏は語った。

講演:『流通BMSの最新活用動向と今後の普及に向けて』
ユニー株式会社 執行役員 営業統括本部 IT物流部 部長 兼情報システム部担当部長 角田 吉隆 氏

2007年より流通BMSを導入しているユニー株式会社の角田吉隆氏は、同社での最新の利用状況と導入メリットについて講演を行なった。

「アピタ」「ピアゴ」という2つの業態の店舗を展開しているユニーでは、2005年に低温センターを立ち上げた際、スピードアップのために流通BMSのベースとなったインターネット型のEDIをいち早く入れたという。2008年に第二期のSCM改革を実施する際、サプライチェーン全体を見直し、流通BMSを最大に活かすことを目的に、物流センター網を見直しに入った。「メッセージを活かす」「トランザクション化を図る」「高速伝送を活かす」「リアルタイム化を図る」という流通BMSを活用した戦略のもと、社内システムをすべて流通BMS化で統一。業態に依存しない、リアルタイムでの発注インフラを実現したことによって、往復3時間の受発注時間が短縮し、当日納品もできるようになった。

低温センターでは、時間的にタイトなチルド品・生鮮品をタイムリーに処理できるEDI環境を構築したことで、「かなりの原価低減が図れた」と角田氏は語る。また、物流センターでも、従来のやり方から流通BMSを採用したことによって、1%以上のセンターフィーの削減に繋がったという。

流通BMSの導入で、伝票レス化、受発注や物流業務の迅速化、物流センターの効率化などのメリットを実感しているというユニーでは、これから2年間かけて、JCAを全面的に移行していくという方針だ。すでに社内システムはすべて流通BMSで統一されているが、委託先のセンターがJCAからの移行を完了することで「さらにコスト低減を期待している」と語り、講演を締め括った。

特別講演:『消費財サプライチェーンに関する大規模災害時の課題と今後の取り組み』
経済産業省 商務流通グループ 流通政策課 係長  草野 百合子 氏

特別講演では、経済産業省 商務流通グループ 流通政策課の草野百合子氏が、「ライフライン物資供給網強靱化実証事業」について説明を行なった。「東日本大震災を契機として、販売データや在庫データの重要性が明らかになった」と言う草野氏は、平時から中間在庫情報やPOS情報を集約するシステムを設け、緊急時に飲料水や食料品、生活必需品についてカテゴリ別に確認できる仕組みを構築する重要性を説いた。さらに、こうしたシステムが、より具体化し、実際に稼働する段階となったら、「皆さまにご協力をお願いすることもあるかと思いますが、よろしくお願いします」と協力を要請し、講演を終えた。

『東海地区におけるインフラ分野での協業に関して』
一般社団法人新日本スーパーマーケット協会 東海地区SM協会連合会事務局長 小笠原 孝

最後に新日本スーパーマーケット協会の小笠原孝氏が、本日の説明会を振り返り、「非常に勉強になった。こうした議論を今後、流通4団体の中でさらに話し合っていかなければいけないと感じた」と語った。さらに、小笠原氏は、「中小企業が生き残っていくためには、一企業ではできないことを、流通4団体の各企業が一つになって、メリットを出す必要があるのではないか」と語り、第2回流通4団体合同「流通BMS普及推進説明会」は幕を閉じた。